トランセンドのSSD「JetDrive 420」

「動作が遅い」「ストレージの容量が足りない」。長い間PCを使っていると、必ず直面する問題だ。新しいPCを買わずにこれを解決するには、内蔵ストレージをHDDからSSDに交換するのが手っ取り早い。しかし、自作PC文化のあるWindows PCは比較的気楽に換装できるが、Macの場合、換装をためらう人は少なくない。そんな人のために、トランセンドがSSD換装セット「JetDrive」を発売した。

●必要なアイテムがワンパッケージだから安心

内蔵ストレージをSSDに換装するメリットは、何よりも読み書きの速度が速くなること。条件にもよるが、SSDはHDDに比べて数倍から数十倍もの読み書き性能を発揮する。特に大量のファイルを読み込むOSの起動時に効果が顕著で、環境によっては、起動にかかる時間が半分程度になる。

「JetDrive」は、Mac向けに特化したSSDキットで、SSDに加え、SSDケース、ドライバー、USBケーブルなど、換装に必要なモノがセットになっている。またトランセンドは、Mac OS X向けアプリ「JetDrive Toolbox」を用意。アプリをインストールすることで、「TRIMコマンド」という機能を有効にして、最適な書き込み速度を保つ。

「JetDrive」に換装する前に、検証に使うMacBook「MB466J/A」について説明しておこう。2008年後半に発売された初代アルミボディのモデルで、購入以来、Leopard(Mac OS X 10.5)からMarvericks(Mac OS X 10.9.2)まで、OSをアップデートしてきた。さらに、50本以上のアプリをインストールし、Boot CampでWindowsをインストールするなど、過酷な使い方をしてきた一台だ。

その結果、動作はかなり緩慢になってしまった。特にがまんできないのが、起動だ。電源ボタンを押してから操作ができる状態になるまで、2分30秒以上の時間がかかる。もはや起動することすらおっくうになってしまったMacBookが、SSDに換装することでどれだけ快適になるのか。期待に胸を膨らませながら、「JetDrive 420」の換装作業に取りかかった。

まずは内蔵HDDの環境をSSDに移行する。「JetDrive 420」にケーブルを接続して、外付けドライブとしてMacBookに接続。「Option」キーを押しながらMacBookの電源を入れ、リカバリーモードを起動する。これでHDDのデータを「JetDrive 420」にコピーできる。

約74GBのデータのコピーにかかった時間は約75分。この作業によって、OSはもちろん、アプリや設定、ファイルなど、すべてをSSDに移行することができた。

「JetDrive 420」へのデータコピーが完了したら、Macに内蔵しているHDDを取り出し、「JetDrive 420」を装着する。換装に必要な2種類のドライバーを使って取り外し、取りつける。MacBookを含め、Macはシンプルな手順でHDDの換装ができるように設計されている。落ち着いて作業すれば誰にでもできることなので、臆することなく挑戦しよう。

●SSDに換装完了! 起動時間は1分短縮、読み書き速度は6倍以上!!

「JetDrive 420」への換装は無事終了。さっそくMacの電源を入れると、早くもSSD換装の効果を実感できた。OSの起動時間が劇的に短くなったのだ。実際に、電源ボタンを押してから、操作できるようになるまでの時間を計ったところ、換装後の所要時間は1分13秒。換装前は2分14秒かかったので、およそ1分も起動時間を短縮することができた。たかが1分、と思うかもしれないが、これまで起動で待たされたイライラを考えると驚くほど快適だ。

読み書きの速度は、どれくらい向上したのだろうか。ブラックマジックデザインのベンチマークソフト「Blackmagic Disk Speed Test」を使ってHDD時代と比較した。HDD装着時の書込み速度は37.54MB/s、読込み速度は38.7MB/sだった。一方、「JetDrive 420」は、書込み速度はおよそ6倍の202.4MB/s、読込み速度は7倍の262.0MB/sを記録。驚くべき改善だ。

実際にファイルをコピーして、その実力を試した。1GBのファイルをデスクトップ上でコピーしたところ、HDDでは66秒かかったが、SSDではわずか6秒。高画素カメラやハイレゾ音源が普及し、扱うファイルサイズが増大しているいま、この高速転送は非常にありがたい。

「JetDrive 420」のカタログでは、最大読込み速度が485MBps、最大書込み速度が410MBpsと記載されているが、今回、そこまでの速度は出ていない。これは、検証に使用しているMacBook側の問題だ。「JetDrive 420」はインターフェースにSATA IIIを採用しているが、「MB466J/A」はSATA II。それぞれの規格は互換性があるので使用することはできるが、最大速度がSATA IIの上限になるので、「JetDrive 420」の最大の力を引き出すことができなかったというわけだ。しかし、それを差し引いても、高速化の成果は先ほどのベンチマークの結果からも明らかだ。

「JetDrive」は、MacBookだけでなく、MacBook AirやMacBook Pro、Mac miniなどでも使用できる。Macの機種によって、「JetDrive720/520/500/420」の4モデルがあり、それぞれ240/480/960GBモデルがある。さらに「JetDrive 420」には、120GBモデルもラインアップしている。ほぼすべてのMacに対応しているというのもうれしい。

驚くほどの高速化に加え、必要な機材がすべてセットになっているので、誰にでも簡単にSSDに換装できる「JetDrive」。Macのパワーアップを望んでいる人は要注目だ。(フリーライター・星政明)