『ポンペイ』を完成させたポール・W・S・アンダーソン監督

『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督が最新作『ポンペイ』を完成させた。幼少期から火山の噴火によって歴史から消えた街ポンペイに魅了されてきたアンダーソン監督は念願の企画をついに実現させたが「このタイミングまで撮れなくて良かった」と語る。来日時に話を聞いた。

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本作は、西暦79年に火山の噴火によって灰になった街ポンペイを舞台に、そこで生きる剣闘士のマイロ、上流階級の娘カッシアらのドラマを描いた大作で、子供の頃から魅了されてきた街を舞台に新作を手がけるべく6年に渡って企画開発を行った。「ヨーロッパの多くの遺跡はすでに滅びてしまっているけど、ポンペイは灰に埋もれていたから当時の姿がほぼそのまま残っているんだ。リサーチのために訪れたんだけど、想像が膨らんだし、様々な感情をかきたてられた。だから観客にも同じ体験を味わってほしかったんだ」。

監督は入念にリサーチを重ね、可能な限り街をセットで再現することにこだわる一方で、脚本作りにも力を注いだ。「多くの観客はこの物語で火山が噴火することを知っている。だから街の魅力で観客を惹きつけた後に飽きさせないようにする工夫をしたよ。むしろ噴火をことを観客が忘れてしまうほどのドラマを用意するのが僕の仕事だと思ったんだ」。

アンダーソン監督は、観客が“噴火待ち”にならないよう前半をテンポよく描き、後半は噴火シーンをVFXと3D効果を駆使して描いた。「ずっと想い続けてきた企画だけど、正直に言うと10年前に作れなくて良かったと思ってるよ。『バイオハザード』シリーズで3D映画の経験を積むことができたし、VFXの進化がなければ噴火シーンをここまで写実的に描くことが不可能だったと思う」。一方で、監督は自身の“進化/変化”も待っていたようだ。「様々な経験を積んだことで人間的なテーマをより深く描くことができるようになった。10年前だったらここまでテーマを掘り下げることはできなかったと思うよ。この映画を最初に思いついた時からずっと頭に浮かぶイメージがあったんだ。それは、ポンペイが噴火して、人々が逃げていく中で、ひとりの男が愛する女性のために街に戻っていく場面で、このイメージが映画の核心にあるべきだと思っていたんだ。つまり、この映画は最初から破壊描写やVFXだけじゃない映画になると決まっていたんだよ」。

VFX、アクション、3D、ドラマ……すべての面で進化を遂げたアンダーソン監督は、満を持して『ポンペイ』を完成させたようだ。

『ポンペイ』
6月7日(土)よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー