宝塚歌劇雪組公演 撮影:三上富之

宝塚歌劇雪組トップコンビ壮一帆(そう・かずほ)、愛加(まなか)あゆの退団公演が6月6日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。ラストステージの演目は『一夢庵風流記 前田慶次』と、レビュー『My Dream TAKARAZUKA』だ。

宝塚歌劇雪組公演『一夢庵風流記 前田慶次』/『My Dream TAKARAZUKA』のチケット情報

『一夢庵風流記 前田慶次』は、隆慶一郎の人気小説を舞台化した作品。関白・豊臣秀吉の隆盛期に、“天下の傾奇者”と呼ばれた、華やかで豪快な武士・前田慶次の生き様を描き出す。潔くてストレート、愛情深く、ときに子どもっぽい…。19年のラストステージに、壮の魅力が弾ける役柄が当てられた。映像に合わせて殺陣まわりを見せるオープニングから、その佇まい、立ち居振る舞いに心を奪われる。自由奔放でいたずら好き、人を驚かせては快活に笑う慶次を、壮はイキイキと演じている。大きな愛馬・松風にまたがりながら見せる殺陣まわりも迫力満点だ。

また、愛加は、慶次の幼なじみで前田利家の妻・まつを好演。芯が強く、まつの言葉には奔放な慶次も素直に従う。惹かれ合いながらも、その想いが叶えられることのないもどかしさ。奔放で豪快な慶次がまつだけに見せる弱さ。そんなふたりの関係性が、“漢”の物語に柔らかさを与えている。次期男役トップスター・早霧(さぎり)せいなは、前田家の家老・奥村助右衛門役。幼なじみの慶次を静かに見守る役どころながら、その美しい佇まいに、目を引かれる。本公演で退団する未涼亜希(みすず・あき)は、慶次の命を狙う忍び・雪丸役。特に演技、歌唱に優れた実力派で、組を支えてきた未涼。今回は慶次と対比される“陰”の役だが、存在感たっぷりに演じている。さらに、前回公演『Shall we dance ?』に続き、夢乃聖夏(ゆめの・せいか)が自称京洛随一の傾奇者・深草重太夫役でコミカルな役どころを担い、笑いをさらう。

第2幕の『My Dream TAKARAZUKA』は、華やかでエネルギッシュなステージングの中、サヨナラ公演らしい演出がふんだんに盛り込まれている。プロローグからひとり銀橋に立ち、これまでのタカラヅカ生活を想い、歌う壮。一つひとつの言葉が、聴く者の心にじんわりと心に広がっていく。雪をイメージしたステージのほか、中詰めでは、カラフルな花をイメージ。壮が長く過ごした花組への感謝も表した演出だ。美しく、優しく、粋でカッコ良い。全編を通して、壮のさまざまな魅力あふれるステージに、いつまでもその姿を観ていたい…と思わずにいられなかった。

兵庫公演は7月14日(月)まで上演中。また、8月1日(金)から31日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは6月29日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行抽選(プレリザーブ)を6月21日(土)11時から24日(火)11時まで受付。

取材・文/黒石悦子