4月26日、コジマNEW静岡店がリニューアルし、コジマ×ビックカメラ静岡店に生まれ変わった。ビックカメラグループのなかで、静岡県下初のコラボレーション店舗として、地域密着型の郊外店にデジタル機器の最新機種が豊富に揃う駅前店の要素を入れて、新規顧客を開拓する。また、店内で楽しさを演出することで、新規顧客をリピーターとして確保していく。(取材・文/佐相彰彦)

コジマ×ビックカメラ静岡店

店舗データ

住所 静岡県静岡市駿河区国吉田1-1-57

オープン日 2014年4月26日(リニューアル日)

売り場面積 約5900m2

従業員数 約60人

●県下最大の商圏をもつ静岡市 「やめまいか」のお客様を吸引

静岡県では浜松市に次ぐ71万の人口を抱える静岡市。面積は全国で5番目に広い市で、県庁所在地の市としては日本最大だ。人口集中地区や商圏は、浜松市を抜いて県内最大。県内の主要経済圏として何かと比較される静岡と浜松だが、最も異なるのは市民の気質。浜松市民は、遠州言葉で「やらまいか(やろうじゃないか)」といわれるほど積極的に行動するのに対し、静岡市民は「やめまいか(やめようか)」で、やや消極的でゆっくりと行動するといわれる。「やめまいか」気質の人々をいかにお客様にするか、来店の動機づけに心を砕く家電量販店が多い。

4月26日、コジマNEW静岡店がコジマ×ビックカメラ静岡店としてリニューアルオープンした。県下初のコジマとビックカメラのコラボレーション店舗を静岡市でオープンした理由を、西村禎彦店長は「コジマNEW静岡店には、目的をもって来店されるお客様が多かった。そのお客様をリピーターとして確保するため」と説明する。また、「静岡市には、新しいお客様を獲得できるポテンシャルがある。品揃えの拡充や店内レイアウトの変更など、店舗の力を強化したことで、さらに多くのお客様を吸引する素地が整った」という。

店舗は国道1号沿いで、立地は申しぶんない。売り場面積約5900m2の大型店で、市内のほかの店と比べても品揃えは充実している。しかし、隣にヤマダ電機テックランド静岡国吉田店という強力なライバルがいて、コジマNEW静岡店時代は激しい競争を繰り広げていた。もちろん一定の固定客は確保していたが、価格競争だけだと最後は体力勝負になってしまう。「価格だけではない価値を提供する」として、コラボレーション店舗として再スタートを切ったのだ。

●カメラ関連商品の品揃えを4倍に 体験コーナーと接客で販売増

西村店長が「幸先のいいスタートを切ることができた」というオープン初日は、多くのお客様が来店した。「近くにお住まいのお客様だけでなく、遠くからクルマでいらっしゃったお客様もいる。リニューアルに手応えを感じた」と自信をみせる。

品揃えは、デジタル機器を中心に取扱い商品の数を増やしている。とくに拡充したのはデジタルカメラ関連の商品で、「コジマNEW静岡店の4倍」(西村店長)という。レンズをはじめ、バッグや三脚などは、ほかの店舗に比べて群を抜く品揃えだ。「写真が趣味のお客様から、非常に高い評価をいただくようになった」そうだ。

オーディオ関連では、高級スピーカーを試聴できる個室を設置。「高級スピーカーが豊富に揃い、気軽に体験できる店舗は、県内では限られる。遠方からもお客様が聴きに来られる」(西村店長)。珍しいところでは、レコードプレーヤーの扱いを始めたことで、「団塊世代のお客様をリピーターとして確保できた」という。また、来店者が自分のスマートフォンで視聴できるイヤホン・ヘッドホンの体験スペースを設けたところ、「ほかの商品を買いに来られた方が立ち寄って、ついでにご購入いただけるようになった」と、客単価の向上につながったことに手応えを感じている。

こうした活況の要因を、西村店長は「デジタルカメラやオーディオは、スタッフに専門的な知識が要求される。ビックカメラグループのノウハウでスタッフを教育したことで、お客様が安心して購入できるようになったのではないか」と分析する。実際に、デジタルカメラやオーディオのコーナーでは、お客様がスタッフの説明を熱心に聞いていたり、オーディオに精通したお客様などがスタッフと談笑したりという光景が見られた。来店客の数そのものが大幅に増えているわけではないが、品揃えの強化と専門教育を受けたスタッフの接客によって、「やめまいか」の市民の心をつかんでいるわけだ。

白物家電コーナーでは、「フトン専用ダニクリーナーのコーナーで、実際にベッドを置いて体験できるようにしたところ、飛ぶように売れている」という。洗濯機や冷蔵庫など大型商品については、「広い戸建てに住むお客様が多いからなのか、高機能で大容量の上位機種を購入する傾向が高い」そうだ。

週末には必ずイベントを実施して、「楽しさ」の演出も欠かさない。県内で初めてコジマ×ビックカメラとして生まれ変わった静岡店が、どのような客層を開拓していくのか、期待がかかる。この店舗の成功が、コラボレーション店舗を静岡県で拡大していく布石になる。

●店長が語る人気の理由――西村禎彦 店長

池袋や渋谷、横浜などの大型店舗を経験し、2年前にビックカメラ浜松店に赴任。駅前店の経験が豊富だ。「駅前店のノウハウを郊外店で生かす」という志を抱いて、コジマNEW静岡店に来て、リニューアルオープンを迎えた。

NEW静岡店の第一印象は、郊外店にもかかわらずお客様の絶対数が多い、ということだった。駅前店はいわゆる一見さんが多く、また、下見目的で訪れる方も多い。静岡店に来て、「この店舗なら、購入目的で来店されるお客様をしっかり確保しながら、新しいお客様を獲得することができる」と考えた。リニューアルの幸先のいいスタートは、西村店長の手腕がいかんなく発揮された結果だ。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2014年6月2日付 vol.1532より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは