脚本家・坂元裕二がAV業界をテーマに選んだ理由

“モザイク”という単語に敏感なのは男性だけ? それとも女性にも引っ掛かるものがあるのか。アダルトビデオにおけるモザイクは、観たい部分を隠す憎き存在でありながら、その一方で想像力をかきたてる大切な役割を果たしている。もちろん、無修正はいろいろな意味でアンタッチャブルなわけで…。本作の脚本を手掛けた坂元は「このモザイクを消せないものか」と考えたという。

「幾重にも重ねられたモザイクを消しながらわたしたちが見つけたものは、この国の社会システムそのものでもあります。モザイクとは何か、モザイクの向こうには何があるのかないのか。モザイクをかけているのは誰か、そんなことをこの物語の中で考えていただければと思います。『モザイクジャパン』というタイトルですが、内容にはモザイクをかけていません」とコメントを寄せた坂元は、セックス産業で潤う田舎の街を舞台に、深い人間心理や社会の闇を独自の視点で描出。

毎回、彼の着眼点に驚かされ、感服しているという演出の水田伸生は「今回は感服を超えて驚愕だわ…。こりゃ民放地上波では出来ないわ…。やると決めたWOWOWも凄いわ…。私は、坂元裕二さんとWOWOWに鍛えられている」と脱帽していた。

しかし、本当に鍛えられたのは、本作でいろいろなことにチャレンジした俳優陣なのかもしれない。

坂元の脚本と水田の演出に応えた役者たち

主人公の理市を演じた永山絢斗は、坂元裕二と水田伸生がタッグを組む作品への参加は初めて。俳優として成長著しい彼は、アダルト産業の好景気に沸く故郷の町で、破滅や成功、絶望と快楽の全てを経験していく朴訥な青年を好演。ローションガブ飲み、女体盛りならぬ“男体盛り”、そしてAVではおなじみのハ○撮りなど、普通の連ドラでは経験できないようなシーンにも積極的に取り組んだ。

「素晴らしい脚本に色を付け、自分で自分にかけてしまっているモザイクを取り除くことが出来たら、僕も少し成長出来るかもしれません」と語る永山のひと皮もふた皮も剥けた演技は見もの。

ちなみに、ご存知の方も多いと思うが、彼の兄は人気俳優の瑛太。瑛太と言えば、坂元が脚本を手掛けた「それでも、生きてゆく」や「最高の離婚」に出演しているだけに不思議な縁を感じる。

また、アダルトメーカーの社長・九井を演じる高橋一生は激辛カップ焼きそばをモリモリと食しながら自社の女優と乱交パーティにいそしみ、理市が一目惚れするヒロインの桃子に扮したハマカワフミエはヌードはもちろん、コスプレまで披露するなど、体を張って個性的なキャラを体現。

かつて、NHK朝ドラ「まんてん」のヒロインを務めた宮地真緒もAV女優役ということで、脱ぎっぷりもエロさも“満点”の芝居でカオスな世界観を演出している。

全5話の中には、まだまだ伝えたいあんなことやこんなことがたくさんあるが、この“言葉のモザイク”の向こう側はドラマを観てのお楽しみ。6/14土に放送される第1話から4話までの「イッキ観放送」をチェックして、翌日放送される衝撃の最終回に備えてみてはいかが?

■モザイクジャパン[R15+指定相当] 最終回直前一挙放送!
WOWOWプライムにて6月14日(土)深夜0時45分~

■連続ドラマW『モザイクジャパン』[R15+指定相当]
WOWOWプライムにて6月15日(日)夜11時~第5話(最終話)を放送
 

つきやま・たけお●某TV情報誌で、インタビュー原稿や特集記事を執筆しているフリーライター。映画「男はつらいよ」「トラック野郎」シリーズなどの邦画全般と、甘い食べ物をこよなく愛す。好きな俳優は寺尾聰。月3~5回のペースでボウリング・卓球・ダーツに興じる非公式の“部活”に所属。