ザ・フィルハーモニクス (c)Claudia Prieler,Nurith Wagner-Strauss/DG ザ・フィルハーモニクス (c)Claudia Prieler,Nurith Wagner-Strauss/DG

6月18日(水)より日本公演をスタートさせる「ザ・フィルハーモニクス」が、5月20日、ウィーン・コンツェルトハウスで定期演奏会を開いた。シーズンに3回のシリーズの一環であり、今回も1800座席の大ホールが満杯状態。“シネマの魅惑”をテーマに『サイコ』『シンドラーのリスト』『ウェストサイド・ストーリー』などの映画音楽を、さまざまなアレンジで聴かせたステージは、とにかくミュージシャン、聴衆双方のノリがスゴい!

「ザ・フィルハーモニクス」の公演情報

「クラシックとエンタテインメントの融合」、「時代とジャンルを越えた最高のエンタテインメント」と呼ばれて、いまや高い人気を誇るこのグループはウィーン・フィルから4人(第1ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバス、クラリネット)、ベルリン・フィルの1人(チェロ)、それにピアノ兼アレンジャーと第2ヴァイオリンを担当する2人のヤーノシュカ兄弟の7人で結成されている。

いかなるジャンルの曲でも、どのようにも弾くことの出来る凄腕集団として自他ともに許す存在であり、クラシックからラテン、ジャズ、ジプシー音楽など、およそ限界というものがないのだ。現在の彼らの成功ぶりは、コンツェルトハウスが大晦日夜のコンサートのうちのひとつを、数年前から任せていることで理解できるだろう。ヨーロッパのニューイヤーズ・イヴは一年中で一番大騒ぎする“熱い夜”。コンツェルトハウスと並ぶウィーンの2大ホールの一方である楽友協会では、ウィーン・フィルによるシルヴェスター・コンサート(プログラムは全世界へ衛星TV中継される翌朝のニューイヤー・コンサートと同じ)が伝統的に定着している。つまり、「ザ・フィルハーモニクス」が自分たちの母体であるウィーン・フィルに対抗するという、おもしろい現象が起きているわけだ。しかもウィーン・フィルそのものが彼らの存在を公認しているのだから、さらに痛快だ。

世界一保守的とされているウィーン・フィルから出てきたこのユニークで型破りな集団は、世界のあらゆる音楽を手掛けながらも、やはり母体であるオーケストラの持つ優雅な美感を備えているところが大きな魅力だ。クラシック・ファンにとっても十分楽しめるのは間違いない。

文・山崎睦(在ウィーン)

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