三谷幸喜  撮影:源 賀津己 三谷幸喜  撮影:源 賀津己

この夏、三谷幸喜が作・演出を手がける三作品が一挙に上演される。舞台『君となら』とパルコ・ミュージック・ステージ『ショーガール』、さらに三谷文楽『其礼成心中』だ。それぞれの作風は大きく異なるが、いずれも核となるのは三谷独自のコメディセンス。同時期上演を前に、三谷は「喜劇作家である自分の原点を振り返って、そこからさらに先へ進む。今年はそんな年にしたい」と意欲を語った。

三谷幸喜の舞台 公演情報

1995年初演の『君となら』は当時、“3分に1回笑える”と評されて大ヒットした抱腹絶倒の家族劇だ。1997年以来の再演となる今回は、初舞台の竹内結子を主演に迎え、初めて三谷自らが演出を担う。「勢いのあるコメディです。今の僕が書いたら、全然違うものになるはず。ある意味、ニール・サイモンやチェーホフをやるのと同じ気持ちで、19年前の三谷幸喜という作家が書いた作品を演出するという感覚ですね。あえて当時のままの台本でやることで、また新たに見えてくるものがあるんじゃないかと。とてもお客様に愛された作品で、しかも今回は竹内さんが主演ということで、普段お芝居を観ない人も劇場に来てくださるのではと期待しています」。

『ショーガール』と聞いて思い出すのは、1974年から1988年にPARCO劇場でシリーズ上演された木の実ナナと細川俊之出演、福田陽一郎脚本構成・演出による伝説のショーステージだ。その舞台に影響を受けた三谷が、今回は敬意を込めてタイトルはそのままに、三谷流の小粋な大人のショーを書き下ろした。『君となら』の終演後のステージを使って夜22時に開演するスタイルも話題となっている。「仕事の後にゴハンを食べて、一杯くらい飲んでから“さあ見に行こう”と。そんな見方ができるのは、すごく豊かですよね。舞台の“敷居の高さ”を取っ払う、ひとつの突破口になるといいなと思っています」。

出演は、三谷が「このふたりの存在があれば、新しい『ショーガール』を生み出せると思った」と信頼を寄せる川平慈英とシルビア・グラブ。日常から解き放たれた、とびきりゴージャスな夜に誘ってくれそうだ。「これまでお洒落なものは恥ずかしいから茶化したりしていましたが、もう腹をくくって“どうだ!”ってくらいシャレのめした舞台にします」。

そして一昨年の初演、昨年の再演と、夏のPARCO劇場を賑わしてきた三谷文楽『其礼成心中』が、今年は京都に進出する。「文楽の世界に足を踏み入れてみて、やはり関西の文化なんだなということを強く感じました。本拠地での上演に嬉しさとドキドキが半々の気持ちでいます」。東京から京都へ、今夏は三谷幸喜の笑いの原点を辿る旅を勧めたい。「スタンプラリーみたいに全部観てくださった方には、“三谷にはどれだけ引き出しがあるんだ!”と確認していただけたらありがたいですね(笑)」

取材・文 上野紀子