『過ぐる日のやまねこ(仮)』の木下美咲、鶴岡慧子監督、泉澤祐希

第34回PFFアワードでグランプリに輝いた鶴岡慧子監督の最新作『過ぐる日のやまねこ(仮題)』のメインキャストが木下美咲と泉澤祐希に決定した。すでに海外でも高い評価を集めている鶴岡監督は、ふたりのキャストと共に新作で何を描くのか? 来月のクランクインを前に3人に話を聞いた。

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本作は、幼少期に体験した父の死を機に当時の記憶が曖昧な時子(木下)が、幼少期を過ごした田舎町へ向かうところから物語が始まる。時子はその町で、身近な人の死によって孤独感を抱えている高校生・陽平(泉澤)に出会い、お互いに心が癒されていく中で、ふたりの“死”にまつわる真実が明らかになっていく。

木下は青山真治監督の『共喰い』で注目を集めた若手女優で、泉澤はNHKドラマ『東京が戦場になった日』で主役に選ばれた実力派だ。「ふたりの存在感を立ち上がらせることが、この映画をつくる上で重要だと思った」という鶴岡監督は「若手の役者さんの中でもふたりはとても存在感がある。ふたりが持っている雰囲気や存在感が、大変な過去を背負ったキャラクターにプラスになると思った」と説明する。一方、脚本を受け取った木下は「世界観がとても神秘的。私が演じる時子は、ずっと強がって生きているけど、中身は幼くて弱い女の子。強がっている姿が弱く見えるように演じたい」と言い、泉澤は「陽平は自分の中に抱え込んでいるものがあって『人と関わり合いたくないのかな?』と思う反面、子供っぽさもある。そのギャップをどのように演じていくか楽しみにしています」と語る。「ふたりのバックグラウンドが物語に大きく影響してくるので、それをどう積み重ねて描いていくのか、そしてふたりが出会うとどうなるのか? 地に足をつけてコツコツと描いていくことが課題です」(鶴岡監督)

本作は映画製作支援システム“PFFスカラシップ”の下で製作されるが、本企画は過去に『運命じゃない人』(内田けんじ監督)や『川の底からこんにちは』(石井裕也監督)など海外でも高評価を集める作品をおくりだしてきたが、『共喰い』で海外の映画祭に出席した木下は「海外では日本の人とは感性が違うので“ここで笑うのか!”という反応もあって楽しい」と笑顔を見せ、泉澤は「イメージがわかないですけど、海外の映画祭に行けるのであれば行ってみたいです」と意気込みを語っている。

撮影は監督の故郷でもある長野県の上田市で来月上旬からスタートし、今年9月に開催される第36回PFFでプレミア上映される予定だ。ちなみに現在、クラウドファンディングの仕組みを利用して本作の製作を支援するプロジェクトが行われており、誰でも1000円から本作の製作を支援できる。

『過ぐる日のやまねこ(仮)』
第36回PFFにてプレミア上映後、全国主要都市にてロードショー公開