また、第七回で読者賞を受賞した山内マリコさんの「16歳はセックスの齢」が収録されている連作短篇集『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎)も同様です。

「16歳はセックスの齢」は、「16歳で処女喪失しよう!」と意気込む二人の女子高生が登場する作品なのですが、全体を通して読むと、「性」は暮らしの中のほんの一部でしかないことに気づかされます。むしろ作品の中に一貫して流れている、衰退していくばかりの地方都市に住む若者たちの鬱屈とした空気感や、男女の悲喜こもごもに激しく共感してしまうストーリーでした。

セックスのその先にあるものや、現実を見据えて強く生きたいと思う女性の方に、こちらの二つの作品はおススメです。
 

海外でも……

日本だけにとどまらず、海外でも女性向け官能小説は人気です。2011年に発売されたE.L.ジェイムズ作のSM官能小説『フィフティ・シェイズ』三部作の驚異的なヒットは記憶に新しいかと思います。2011年6月にイギリスで発売されるや『ダ・ヴィンチ・コード』『ハリー・ポッター』を超えるベストセラーになり、世界売上7千万部を達成、映画化も決定しました。

引っ込み思案で男性経験の少ない女性が億万長者の若手企業家と出会い、SMに傾倒していく……というストーリーなのですが、基本は純愛小説です。

ちなみに濃厚な性描写が主婦層にヒットしたことから「マミー・ポルノ」と呼ばれているそうです。これを受けてアラサー・アラフォー世代の女性を対象とした官能小説が飛躍的に増え、イギリスの書籍売り上げは前年度の減少から増加に転じるなど、様々な波及効果も生まれたのだとか。

『フィフティ・シェイズ』シリーズは、そもそも『トワイライト』シリーズのファンフィクションとしてウェブサイトに掲載されたものです。いわば、同人作家の書いた同人誌であるということ。同人誌ならではの突っ込みをいれたくなる部分が多々出てくる点も、ファンの心をくすぐり、人気を広げた要因の一つであったかもしれません。

ロマンス小説とは一味違う楽しさが味わうことができ、人間関係や心理描写なども細部まで描かれている点が好感を持てる『フィフティ・シェイズ』シリーズ。
主人公の女子大生「アナ」に自己投影しながら楽しむことができます!

 

図書館でも気軽に借りられる!?

最後に、筆者がおススメの女性向けの「女子とエロ」をテーマにした小説を挙げていきたいと思います。中には「官能小説」とまでは言えないものも混ざっていますが、「図書館でも気軽に借りられる」という基準で選んでみました(笑)。参考になれば、嬉しいです。

まずは「R-18文学賞」出身の作家である、宮木あや子さんの作品です。
江戸時代の吉原を舞台にした小説『花宵道中』(新潮社)や、少女たちの恋の痛みと、ゾッとするような毒が描かれている短編集『官能と少女』(早川書房)、閉ざされた女子寮を舞台に、4人の女の子同士の恋愛が描かれた『雨の塔』(集英社)など、宮木さんは美しくも切ない、官能的な小説をたくさん書かれています。使われている言葉が一つ一つ、宝石のように美しいのも見所の一つです!