丸山係長は「市民の皆さまからも、『なぜ横浜市は医療費無料の期間が短いのか? もっと長くしてほしい』と言う声を多数いただいております。現状の制度で十分だとは考えていないのですが、横浜市の税金をどこに使っていくか、という問題で、医療費ばかりに数十億円追加していくというのは簡単ではないんです。所得制限の幅も広げていきたいという思いはあるのですが、なかなか・・・」と苦しそうに説明してくれた。

現在は、重度障害者医療やひとり親医療の助成制度もあり、対象者は窓口負担金が無料という仕組みもある。
この事業も小児医療費助成同様、県費補助事業となっている。
しかし、下記の資料のとおり、事業開始時には、県費で100%まかなっていた重度障がい者医療は、現在は県費はかかる費用の3分の1しか負担しておらず、残りはすべて横浜市が負担している。
 

県補助金削減の詳細
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つまり、利用する私たち市民への表向きの助成内容は変わっていないのに、年々横浜市の負担は億単位で増えてきていた、ということになる。
ちなみに、東京23区の医療費負担は、都の助成でかかる費用の2分の1を負担しているそう。これは、東京都の財源が豊かだからできることだ。

横浜市では、2012(平成24)年に医療費無料の対象を「小学校入学前」から「小学生1年生まで」に延長しているが、対象年齢を1年増やすと、年間約9億円の追加費用がかかるとのこと。

ただ、横浜市としても「財源が足りないから仕方ない」と放置しているわけではない。

現在の健康保険の制度では、小学校に入学する前までの子どもの負担額は2割。つまり、この2割分を自治体が負担することで市民の窓口負担がゼロ、となる。

そこで、横浜市は国に対し子どもの医療費負担額を1割にしてほしい、という内容の要請を約10年前から行っている。そこから財源を確保し、医療費助成を拡大したい、という考えだ。
また、神奈川県に対しても県費負担の増額を市長から要望し続けている。

神奈川県に対しても県費負担の増額を要請中

小児医療費助成制度だけを比較すると、ほかの区や市に劣っている部分もあるが「子育て支援の全体を見てほしい」と加藤課長。

小児救急病院の拡充のため、NICU(新生児集中治療室)を増設するなどしている。2010(平成22)年には72床だったNICUは、現在では90床まで増加。安心して暮らせる町づくりに力を入れている、とのことだった。

また、2013(平成25)年に一時ゼロとなった待機児童についても、今年2月には再び3352人まで増えたことにより、再び「待機児童ゼロ」を目標とし整備を進めている。

「子育てしている皆さんに、横浜は住みやすいと思ってもらえるように、この先も改善していきたい」と話してくれた。