ミュージカル『天才執事 ジーヴス』稽古場より ミュージカル『天才執事 ジーヴス』稽古場より

ウエンツ瑛士と里見浩太朗の初ミュージカル作品としても注目が集まっている『天才執事 ジーヴス』。数多のユーモア小説で知られる英国人作家P.G.ウッドハウスのベストセラーをもとに、アンドリュー・ロイド=ウェバー(『オペラ座の怪人』『キャッツ』)の作曲によって1975年にミュージカル化。その後のリバイバル版やブロードウェイ版も大人気を博しているコメディ・ミュージカルだ。今回が初演となる日本版では、他に高橋愛、なだぎ武、右近健一、エハラヒロユキ、入来茉里、つぶやきシロー、そして樹里咲穂にモト冬樹と、個性と実力を兼ね備えたキャストが勢ぞろい。6月中旬、和気あいあいとした稽古場を訪ねた。

ミュージカル『天才執事ジーヴス』 チケット情報

スタジオに入ると、ちょうどウエンツ演じるお気楽な青年貴族バーティ・ウースターが、元婚約者で肉食系女子のオノリア(樹里)に迫られている場面。狭い馬車の中で暴走気味の樹里と必死に身をかわすウエンツの対比がなんともおかしく、稽古を見ているキャスト席からも思わず笑いが。次の場面では、ある事情から窮地に陥ったバーティが、忠実な執事ジーヴス(里見)に助けを求めるなかで丁々発止の会話が続く。焦った表情にもお坊っちゃんらしい甘い雰囲気がにじむウエンツと、主人を見守る穏やかな笑顔ながら冷静に助言する里見は、改めてハマり役と思えた。

一方、バセットの姪スティッフィーに扮する高橋は意外にもコケティッシュなたたずまいで、役作りはすでに進んでいる様子。高橋に加えてモトや右近らミュージカル経験が豊富なキャストからは、小道具を取り出すタイミングをそれぞれ演出家に提案するなど、この座組みの風通しの良さが見てとれる。それはきっと、いわゆる“大御所”でありながらスタッフの説明に真摯にうなずき、熱心に台本に目を通す里見や、バーティ役に没入してその感情を追いつつ、一つひとつの動きをスタッフと熱心に確認する座長・ウエンツの姿勢によるところが大きいのだろう。

真剣勝負な稽古が長めに続くと、質問をニコニコとスタッフに投げかけて場を和ますのはムードメーカーの右近だ。さらに取材中、モトが床で滑って転ぶハプニングが起きたのだが、「大丈夫ですか」と心配げな高橋の横に近づいたのはウエンツ。「(モトの髪の毛にかけて)ツルツルだから…と言ってあげて」とささやき、高橋が申し訳なさそうに「ツルツル…」と繰り返すと、スタッフ陣もつい吹き出して稽古場が笑いに包まれた。稽古の間、振付の前田清実が何度も歌と動きのテンポをキャストに確認していたように、ミュージカルの舞台、それもコメディならば、チームワークの良さは必須。このメンバーなら、本番がおおいに期待できそうだ。

7月4日(金)から13日(日)まで東京・日生劇場にて。チケット発売中。なおチケットぴあでは、対象公演日限定で舞台終了後にキャストと一緒に写真撮影ができるチケットも販売中。

取材・文 佐藤さくら

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます