最新作『渇き。』が間もなく公開になる中島哲也監督(C)2014「渇き。」製作委員会

『嫌われ松子の一生』『告白』の中島哲也監督が、役所広司を主演に迎えた新作映画『渇き。』を完成させた。新作を発表するごとに大きな話題を呼んできた中島監督は新作で一体、どんなドラマを描くのだろうか?

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本作は、失踪してしまった優等生の娘を、元刑事の父親が捜索するうちに想像もしていなかった事態に巻き込まれていく姿を描いた作品。主人公の元・刑事、藤島を役所が、娘の加奈子を小松菜奈が演じ、妻夫木聡、オダギリジョー、中谷美紀、二階堂ふみ、橋本愛が共演する。

この映画は、深町秋生の小説『果てしなき渇き』が原作。中島監督は「映画化など全く意識せず一気に読み終えました。暴力小説でありながらギリシア神話的な物語が内包されている気もして、ずっと頭に残っていました」と振り返る。

思い返せば、中島作品は、強烈なビジュアルとキャラクターが次々に登場し、既存の映画文法や情緒的な語りをあざ笑うかのような描写によって観客を翻弄するが、映画のラストに必ず“愛のドラマ”がひっそりと息づいている。映画が過激になればなるほど、そこに潜む“愛のドラマ”は深く、くるおしいものになっていく。中島監督は「不思議なことですが、前作『告白』を撮った際に、女教師が少年Aに向けた“憎”が実は“愛”に近い感情だと感じました。彼女の復讐は、どこかとても…愛情表現に似ている、と。その時、ふと『果てしなき渇き』のことを思い出し、この作品でなら、“愛”と“憎”という表裏の感情が肉薄し混然となる様を、父娘の関係を通して描けるのではないかと思った」と語る。

本作で主人公の藤島は、失踪した娘を探しながら何度も「ブッ殺す」と叫ぶ。天使のように愛らしく優等生だった娘が実は“バケモノ”のような存在で、彼女の変化に父である藤島がどう関係したのかが明かされていくスリリングな物語の中で、藤島の「ブッ殺す」の声はどんどんエスカレートしていく。しかし、観客はそこに“愛”を感じるはずだ。「藤島が生きるための“光”であり“くさび”でもある“血のつながり”に向き合うにつれ、同義と化してゆく『ブッ殺す』と『アイシテル』。今は、ボロボロになりながらもやがて”父”になってゆく彼の姿が、映画を観る人々に少しでも新鮮に映ってくれればいいなぁと祈るのみです」。

本作の内容は刺激的で、描写は過激だ。しかし、そこには“過激な描写を用いることでしか描けない愛のドラマ”が待ち受けているのではないだろうか。

『渇き。』
6月27日(金) TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー