アクションはカメラの位置を意識しなければいけない

●13:20~14:05

スタントコーディネーター・辻井啓伺氏

 続いては、『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』『藁の楯』『悪の教典』など三池作品にも多数参加しているスタントコーディネーター・辻井啓伺氏による「アクション序説」。

つまりはアクションの基本……攻める側、攻められる側には何が必要かを、辻井氏がパートナーを相手に実際にやりながら見せていく。

ここでの大きなポイントは次の3点だ。

1.相手とのコミュニケーションが大事。そこが上手くいかないとケガをする。

2.攻める側は殴ったり、蹴ったりするときにぎりぎりで止める技術を習得する必要がある。そのためにはパンチを出したとき、蹴ったときの自分と相手との距離を知っておく必要がある。

3.攻められる側は表現力が必要。例えばお腹を殴られたときの気を失いそうになるほどの痛みを全身で表現する術、顔を殴られた後で再び相手の方に向き直る首の動きといったリアルなリアクションを習得し、イメージの引き出しをどれだけたくさん持っているか? が大切。

 

  

これらの基本を頭の中に叩き込んだら、今度は実習だ。ここでもまずはウォーミングアップから。

1.目をつぶって両手を真横に、続いて真上に真っ直ぐ伸ばす。この準備運動のときに手が本当に真っ直ぐ横や上に伸びているか? を確認。

2.足先で自分の名前を書く。右足が済んだら左足でもやる。このときに目線を決めたら、足以外は動かないようにする。重心がブレるので頭は絶対に動かさない。

 

  


こうしたレッスンの中で、走るときも重心を下げて目線を決めたら頭を動かさない、全力で走っていても重心を後ろにすればすぐ止まれる、蹴りのときも重心を下げる、自分の肉体的な限界を知っておくことが大事、といったことが「穴子」たちに伝えられていった。

ここからは2人ペアになり、カメラで横から撮ったとき、殴られる側の後ろ側から撮ったときに、どうしたらリアルに見えるか? が具体的に示されていったが、辻井氏は「それも要領」という。

「殴る人はどれだけぎりぎりにパンチを通すことができるのか? 殴られる側は相手のパンチに添ってどこまで態勢を崩せるか? それこそ一瞬の声の入り方、力の入れ方でアクションの見え方は変わります」

「穴子」たちが一斉にどよめいたのは、辻井氏の次の言葉だ。「『クローズZERO』のときは小栗(旬)くんも山田(孝之)くんも最初は全然できなかった。でも、映画の彼らはカッコいいですよね。僕が教えたんです(笑)」

だが、それだけではない。

「彼らはスキルが高いし、山田くんは自らボクシングジムに通っていたけれど、役者にはそういった行動力も必要。練習じゃ教えられないこともたくさんある。不良を演じるときにその気持ちを分かろうとするのと一緒で、アクションをやるときも感じてください」

辻井氏は最後にもう一度次のように繰り返した。

「アクションも芝居と連動したもの。なぜ殴るのか? なぜ迫力がないのか? そこには常に理由があるし、理屈を知った方がいい。カメラの位置も意識しなければいけない。それらをすべて分かっているのがプロです」

 

カメラを意識したアクションを三池監督自らが手本になって指導
  


わずか45分の短い時間だったが、濃密で熱い講義に「穴子」たちも充実の顔を見せていたのは言うまでもない。

 

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