会見より。左から、上山竜司、小西遼生、音月桂、一路真輝、良知真次 会見より。左から、上山竜司、小西遼生、音月桂、一路真輝、良知真次

韓国発の心理スリラーミュージカル『ブラック メリーポピンズ』が7月6日、東京・世田谷パブリックシアターで開幕。初日前日の5日には通し稽古を公開、主演の音月桂らによる会見も行われた。

ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』 チケット情報

『ブラック メリーポピンズ』は、2012年、韓国演劇のメッカ、ソウル・テハンノンの小劇場で、30代の女性ソ・ユンミが、脚本、音楽、作詞、演出の全てを担当し創作した韓国オリジナルミュージカル。1920年代のドイツを舞台に、4人の養子と、彼らを子どものように慈しんだ家庭教師メリーの、過去の謎が解き明かされてゆく、サスペンスフルな心理スリラー劇。キャストはたった5人ながら、息をつかせぬスリリングな展開と衝撃的な結末、ドラマティックな音楽が話題を呼んだ。

公開稽古は本番さながらの迫真の舞台。グラチェン・シュワルツ博士邸の火事、屋敷は燃え、博士も焼死。博士の4人の養子は、家庭教師のメリー(一路真輝)によって全員救出される。たが、なぜか皆、火事の当時の記憶を失っていた。それから12年、長男のハンス(小西遼生)の元に、当時この事件を担当した刑事から、“博士の手帳”が届き、そこには衝撃の記録が残されていた。ハンスは散り散りになっていた兄弟、アンナ(音月桂)、ヨナス(良知真次)、ヘルマン(上山竜司)を呼び寄せる。12年を経て、4人はそれぞれ心に大きなトラウマを抱えていた……。

冒頭から、5人のハーモニーによる象徴的な楽曲から始まる。男女混声の力強いハーモニーによって、一気に作品の世界に誘われる。この作品の見どころのひとつは、大人となった現在と12年前の子ども時代を、養子役4名が瞬時に演じ分けるシーン。あの事件からそれぞれが何を背負ってきたのか、12年前と現在が見事に交差する。音月桂は不安を抱え可憐なアンナを美しく繊細に演じ、薄いブルーのクラシカルなワンピース姿が美しい。失われた過去を明らかにしたいと願う弁護士となったハンス、その真摯な姿を小西遼生は説得力のある演技と歌で演じきる。ヘルマン役の上山竜司は、情熱的な演技で、アンナへの恋心、過去への葛藤を描く。神経不安症を患うヨナスを演ずる良知真次は、精神の揺らぎと無垢さを巧みに演じる。そしてメリー役の一路真輝は、まさに歌詞にもある”愛の女神”といった佇まい、そして疑惑が向けられるメリーの“影”を見事に体現し、作品世界を牽引する。

会見で音月は「宝塚卒業後1年半ぶりの舞台。“女優”として舞台に立つのが初めてで緊張していますが、楽しみにしています。稽古場に入って、当たり前のことかもしれませんが、あ、男性がいる、というドキドキ感もあって(笑)、私にとっては新鮮でした。男役の時は思いっきり低い音域を一生懸命歌わせて頂いていたのですが、今回結構キーの高い音域を歌わせて頂いていて、そこに男声の厚みのある歌声があわさることでそのコラボレーションに鳥肌が立ちました。憧れの大先輩の一路さんともご一緒でき、稽古が楽しくて終わってほしくないとまで思いました。本番もどんどん充実してゆくのでは」と目を輝かせていた。

公演は7月20日(日)まで。チケット発売中。