『ジゴロ・イン・ニューヨーク』を手がけたジョン・タトゥーロ(C)2013 Zuzu Licensing, LLC. All rights reserved.

ジョン・タトゥーロが主演だけでなく脚本と監督も務め、ウディ・アレンを共演者に迎えた新作映画『ジゴロ・イン・ニューヨーク』が11日(金)から公開になる。本作は“男娼ビジネス”を始めたサエない中年男の物語だが、タトゥーロは「幅広い人に楽しんでもらえるように制作した」という。国際電話で彼に話を聞いた。

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本作の主人公は、タトゥーロ演じるフィオラヴァンテと、アレン演じるブルックリンの本屋店主マレー。本屋を潰してしまったマレーは生活費を稼ぐため、友人のフィオラヴァンテを“ジゴロ”に仕立て上げて男娼ビジネスを始めることを提案。見た目は冴えない中年男だが、女性の心と身体を満たす不思議な才能のあったフィオラヴァンテはまたたく間に稼ぎを増やしていく。「最初はこのような映画になる予定じゃなかった」というタトゥーロは「ウディがたくさんアドバイスをくれて、キャラクターをもっと掘り下げ、幅広い人が楽しめる映画になった」という。

その過程で、フィオラヴァンテと厳格な宗派のラビ(ユダヤ教の指導者)の未亡人アヴィガルの恋のドラマがより深く描かれることになった。「僕はずっと前から女性という存在に興味があったんだ。おそらく僕が母親と仲がよくて、妻とも仲むつまじくやっているからだろう。それから今回の場合は(フィオラヴァンテを演じた)ヴァネッサ・パラディがキャラクターを掘り下げることに役立った。僕の当初の想定以上に深い影響を受けているかもしれないな。作品というのは“生きもの”だから変化していくものなんだよ」。

本作は“ジゴロ”という刺激的な設定を用いているが、根底にあるのは切ない大人のラブ・ストーリーだ。「その通りだ。僕はこの作品を作りながら、自分が今までにどんなラブ・ストーリーに魅了されてきたのか考えてみたんだよ。すると、そのいくつかは愛が成就しない物語だったんだ」。ジゴロであるフィオラヴァンテにとってアヴィカルとの“本気の恋”は御法度だ。しかし、ふたりは商売の関係を超えて、距離を縮め、お互いを理解していく。「例えば、フィオラヴァンテが客とスローダンスを踊る場面はある意味でベッドシーンをダンスに置き換えて表現している。アヴィカルと一緒に食事をする場面もラブシーンと呼んでもいいかもしれない。僕はこの映画で様々な設定を使って、人と人との”ほんのちょっとした瞬間”をデリケートに描こうとしたんだ」。

タトゥーロとアレンの軽妙なやり取りに笑い、大人の恋のドラマが胸に迫る本作は、タトゥーロが語る通り、幅広い層の観客を魅了するのではないだろうか。

『ジゴロ・イン・ニューヨーク』
7月11日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー