市場創出からもうすぐ1年。主要なスマートスピーカーと連携する機器が続々と登場している

日本では昨年夏から販売を開始したスマートスピーカー。ワールドワイドで高いシェアを誇る「Amazon Alexa」と「Google Assistant」、唯一の日本勢であるLINEの「Clova」の三つのプラットフォームがしのぎを削っている。発売当初は「何をすればよいかわからない」「反応がイマイチ」という声もあったが、市場創出から1年で連携機器が増え、登場時より使い方の幅が格段に広がっている。

5月17日にシャープが発表したオーブンレンジ「ヘルシオ」の新製品は、「Amazon Alexa」と「Googleアシスタント」を搭載するスマートスピーカーからの操作に対応。もともと自社のAIを搭載し、献立提案や調理サポートはできた同シリーズだが、本体のボタンを押すなど手間がかかった。これがスマートスピーカーを媒介することで、音声のみで機能が使えるようになった。

スマートスピーカー機能をハードに内蔵するケースも出てきている。6月23日に発売されるソニーの4K対応液晶テレビ「4Kブラビア」は、「Googleアシスタント built-in」に年内にアップデートで対応する予定。液晶テレビをAIスピーカー代わりに使うことができるようになり、連携する家電の操作を行うことができるという。

巨人を相手取るLINEも、4月にソニーモバイルコミュニケーションズのオープンイヤーステレオヘッドセット「Xperia Ear Duo XEA20」と連携を発表。Android OSを搭載するスマートフォンであれば、音声のみでメッセージアプリ「LINE」の送受信ができる。連携機器の数ではまだ海外勢に劣るものの、強みであるコミュニケーションを前面に出することで、独自のポジションの構築を急いでいる。

家電量販店のIoTコーナーは、この半年でずいぶんと広がった。発売当初は連携機器がなく、売り場で試せることも少なかったが、現在は照明やエアコン、調理家電などを周囲に配置し、さながらモデルルームのような売り場を展開する店舗もある。

AIスピーカーは、スマートフォンのように季節ごとに新モデルが登場し、買い替えを促すビジネスモデルではない。プラットフォーム変更のための買い替えや、自宅内での買い増しをすることはあっても、基本は最初に購入したモデルを使い続けるのが前提だ。単価も安いので、ただ売るだけでは販売店にとってのメリットは小さい。

市場は次の普及の起爆剤を探っている段階で、しばらくは外部機器との連携という小さなトピックが続きそうだが、販売店はこの小さな波を見逃さない努力が求められる。「購入後」にこそ商機はある。(BCN・大蔵 大輔)