遠藤幹大監督

世界の新たな才能が集うデジタルシネマの祭典“SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014”が19日(土)に開幕する。注目のメイン・プログラム、長編コンペティション部門でグランプリを競うのは国内外536作品から選ばれた新進監督の12作品。国内の3監督も楽しみな新人が顔を揃えた。

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『友達』の遠藤幹大監督は大学卒業後、演劇活動を経て、東京藝術大学大学院映像研究科で黒沢清監督に師事した経歴の持ち主。客が望む人物を演じる一風変わった仕事を得た無名の俳優の悲喜を描いた同作は、同大学院の修士作品として発表した。「劇映画に本格的に取り組んだのは大学院に入ってから」とのことだが、その“レンタル人物業”ともいうべき物語設定や発想力など、随所に独自性を発揮。「現実と虚構の境界が無くなる難役を上手く演じてもらえた」と監督は語るが、主演の個性派俳優、山本剛史の特性を生かした演出力も確かだ。「映画祭でどんなリアクションがあるか楽しみ」と監督は語る。

一方、『螺旋銀河』の草野なつか監督は「大学時代、著名な映画批評家とは知らず当時、特任教授だった山根貞男さんの講義をとったのが映画の道に進んだきっかけ」と語る新進女性作家だ。「母と姉2人の女系家族で過ごしてきたせいか、女性独特のコミュニティに興味がある」と言う中から生まれたシナリオは、今秋公開予定の『最後の命』などを担当する注目の若手脚本家、高橋知由との共同脚本。容姿も性格も違う女の子ふたりの間に生まれる嫉妬心や憧れ、対抗心や友愛が巧みに浮かび上がるストーリーに共鳴する人は多いに違いない。「自分にとって大きな挑戦で大きな一歩となった」と作品を振り返る。

また、『PLASTIC CRIME』を手掛けたのはフリーの映像ディレクターとして活躍してきた加藤悦生監督の初映画監督作品。「40歳を迎えたとき、今やらないと一生挑戦しない気がした」という強い思いから、自主制作で初の映画作りに取り組んだ。「何より見てくれる人を楽しませることを第一に考えた」と語る作品は、ひきこもりの青年が偶然遭遇した窃盗団に入り、大きく成長していく異色の青春ストーリーが展開していく。「映画監督は選ばれた人がなれるものと思っている。なので今回のノミネートで自分の現実が変わるという甘い考えはもっていない。ただ、こういう機会をもらえたことは光栄」と今の心境を明かす。

昨年節目の10回を迎えた同映画祭。新たな一歩を刻む今回、どんな才能が現れるのか期待したい。

『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014』
期間:7月19日(土)~7月27日(日)
会場:SKIPシティ(埼玉県川口市) *映画祭期間中はJR京浜東北線川口駅東口より無料バスを運行
問合せ:048-263-0818(映画祭事務局)

取材・文・写真:水上賢治