「あんたバカァ?」とつぶやくのはアウト?セーフ?

たとえばアニメをよく見る人なら「あんたバカァ?」というフレーズが、某キャラクターの有名なセリフだと知っているだろう。しかしこれをつぶやいたからといって即座にアウトというわけではない。独創性がないし、そもそもこんな短い言葉まで厳しく締め付けていたら何も発言できなくなる。

「ただ、たとえばbotがひとつの作品のセリフを流し続けて、つぶやきを全体として見たら、元の作品の独創性であることがわかる場合には、権利の侵害となります。また、他人の作品をそれとわかるように引用することは許されていますが、あくまでも自分の表現を主、他人の表現を従とするような関係でなければならないので、botで他人の表現だけを延々流し続けるようでは引用とはいえません。」(さくら弁護士)

なお、歌詞についてもアニメや漫画のセリフと同じ考え方が適用されるが「楽曲を管理する団体があるので少し厳しくなるかもしれませんね」と、さくら弁護士は話す。実際、日本音楽著作権協会(JASRAC)は2012年に“個人ブログなどにおける歌詞掲載利用の許諾”のガイドラインを発表しているが、許諾の範囲は限定的、しかも難解である。botで繰り返し歌詞をつぶやき続けることが大丈夫かどうかといえば非常にあやしい。

[C]で、ナポレオンや福沢諭吉といった歴史的偉人の名言をbotがつぶやくことについては、著作者が死亡してから50年で著作権は消滅するため、セーフ。別のケースとして、タレントがテレビ番組で発したトーク内容を“○○発言集bot”のような形でbot化しているものもある。さくら弁護士によると「著作物として保護されるのは、創作的な表現で文芸や学術の範囲に属するものなので、テレビ番組で話した内容はそのタレントの著作物にあたらないものが多いでしょう。」という。

ここまでプロの法律家に話を聞いてきて、botでの権利侵害は“意外に判断が緩やかだけど100%大丈夫とは言い切れない”、なかなか難しい部分を多く含むように感じられた。最近はbotを気軽に作れる無料サービスも充実しており、自分がフォローする側だけでなく、bot運営者になれるハードルは下がってきた。もし好きなアーティストがいたりお気に入りのアニメを広く知ってもらいたいと思ったりしても、botを作る時は“一般的なファン活動の範囲”でとどめておくよう心がけたい。

 

島田さくらさん
弁護士法人アディーレ法律事務所 所属弁護士(東京弁護士会所属)

自身の過去のオトコ運の無さからくる経験(元カレからのDVや、妊娠が発覚した翌日にカレから別れを告げられたこと)をもとに悩める女性の強い味方として男女トラブル、さらには労働問題などを得意分野として多く扱う。シングルマザー弁護士として、相談者の悩みを解決するかたわら、家庭では子育てに奮闘している。

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。