宝塚歌劇星組公演 宝塚歌劇星組公演 撮影:三上富之

トップスター・柚希礼音(ゆずき・れおん)率いる宝塚歌劇星組の新作公演『The Lost Glory-美しき幻影-』『パッショネイト宝塚!』が、7月18日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。

宝塚歌劇星組公演『The Lost Glory -美しき幻影-』/『パッショネイト宝塚!』のチケット情報

第1幕の『The Lost Glory-美しき幻影-』は、シェイクスピアの『オセロー』をイメージモチーフにしたミュージカル。“栄光の20年代”と呼ばれた第一次世界大戦後のニューヨークを舞台に、男女の愛憎を描き出している。

今作の最大の見どころは、主人公に迎えた専科・轟悠(とどろき・ゆう)と、久しぶりの敵役となる柚希の共演だろう。轟が演じるのは、ギリシャからの移民でありながら、アメリカンドリームを手にしたオットー。夢咲(ゆめさき)ねね演じる美しく若い妻・ディアナを深く愛するがゆえに、柚希演じる部下・イヴァーノの策略にハマり、何もかもが破綻していく…。幸せの絶頂から身も心も転落していくオットーの姿を、圧倒的な存在感と貫禄、そして繊細さを持って演じている。

一方、柚希は、公演前、『THE SCARLET PIMPERNEL』以来の敵役に「とても楽しみです」と語っていたように、オットーに復讐を企てるイヴァーノをゾクゾクするような目つきで表現。巧みな話術で人を転がし、すべてが破滅するように誘導していく。低めのトーン、ニヒルな笑みなど、ダークサイドに堕ちたその様は、トップスターの今となっては、この作品でしか観られない姿だ。また、夢咲は、大富豪の令嬢であり、新進画家として自由奔放に生きるディアナを好演。妻を信じることができないオットーや、人を貶めていくイヴァーノに対し、信じ続ける心の広さや大きな愛で魅せる。イヴァーノにうまく利用される美術教師・ロナルド役の紅ゆずる、有力政治家の息子・カーティス役の真風涼帆(まかぜ・すずほ)らも、オットーの嫉妬、イヴァーノの憎しみを深めるための重要な役どころを担っている。

第2幕の『パッショネイト宝塚!』は、黒塗りでラテン色たっぷりの情熱的なショー。柚希がひとりスーツで踊るシックな幕開きから、ラテンリズムの華やかなレビューへと展開。ブラジリアンダンスと格闘技のカポエイラを合わせた場面もひとつの見どころで、回し蹴りの迫力あるシーンが楽しめる。今回はミュージカルで柚希と夢咲の絡みが少ない分、ショーでのふたりの熱いダンスは見ものだ。柚希をはじめ、星組のイキイキとしたダンスが堪能できる、アグレッシブなステージに仕上がっている。

兵庫公演は8月18日(月)まで上演中。また、9月5日(金)から10月5日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは8月3日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行抽選(プレリザーブ)を7月27日(日)11時まで受付。

取材・文:黒石悦子