渡辺謙

日本が生んだ怪獣“ゴジラ”が海の向こうで再び息を吹き返した。英国人監督ギャレス・エドワーズが手がけた映画『GODZILLA ゴジラ』はアメリカだけでなく全世界で大ヒットを記録し、ついに日本に上陸する。なぜ、日本生まれの怪獣はここまで世界の人を魅了するのか? 本作に出演した渡辺謙はゴジラは“怪獣であって怪獣でないもの”だという。公開前に話を聞いた。

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どこからともなく出現し、時に街を破壊し、時に大怪獣と死闘を繰り広げてきたゴジラは新作でどんな姿を見せるのか? 詳細なストーリーは観てのお楽しみだが、渡辺が演じる芹沢博士は物語上、極めて重要な役割を果たす人物で、謎の巨大生物を追い、研究し、その脅威を誰よりも知っている男だ。「芹沢は研究をしているわけですけど、同時に”自分の研究だけがすべてではない”とも思ってるわけです。人間はコントロールの及ばない自然の力にひれ伏してしまう部分もあるので、研究を進めながら自己否定をしていく相反する部分も持っているんですね。だから、それを言葉や行動よりも、ある種の面持ちだったり眼差しなどで見せていきたいな、という感覚はありました」。

多くの人が渡辺に”信念の人”というイメージを持っているのではないだろうか? どんな時にもブレず、迷わず、自らの信念や想いを貫くために生きる男のイメージだ。しかし、本作の芹沢は迷い、ゴジラという想像を絶する存在を前に立ち止まり、成す術がなく立ち尽くす。多くの観客が渡辺が見せる新たな表情に驚くはずだ。「この映画でゴジラはある種の破壊力として存在するわけですけど、これを自然として捉えるなら、こういう状況は多々あるわけです。災害だったり抗いようのない事故だったり。そういう時、僕らは何もできない。人間は時に自然というものにひれ伏すしかないんだ、という。ゴジラは怪獣であって怪獣でないようなものだと思うんです」。

だからこそ「人々はゴジラを渇望する」と渡辺は分析する。「なぜ、ここまで街を壊されて、踏みにじられても人々が60年もゴジラを渇望するのかというと、人知の及ばないどうにもならないことがあるのは真理じゃないですか。そういう一種の不条理感がゴジラには内包されていると思うんです。その事実に人は畏怖し、畏敬の念をゴジラの背中に託す。それこそが人々がゴジラを渇望する理由だと思うんです。ゴジラというのは、ある種の”祈り”みたいなものですよね。だから、簡単に国境も超えてしまうし、言語ではないあの叫び声が人の心を捉えてしまうんですね」

新作映画ではゴジラの魅力と本質が、息詰まるプロットと、人間たちのドラマを交えて描かれる。「シンプルで短いエッセンスの中に撮影していた時の濃度がしっかり残っているし、エンターテイメント映画と人間ドラマとゴジラ映画がもっている深いテーマがすべて入っている映画になりましたね」。

『GODZILLA ゴジラ』
7月25日(金) 2D/3D(字幕スーパー版/日本語吹替版)公開