TATERU本社にあるIoTアパートのモデルルームを訪問

自宅のあらゆる機器をホームネットワークに接続して、スマートフォンやスマートスピーカーで思いのままに操作する。そんなガジェット好きにとって夢のような住宅が現実のものになりつつある。不動産プラットフォームの開発・運営を行うTATERU(旧インベスターズクラウド)は、2017年6月に賃貸住宅をIoT化する「TATERU kit」の販売を開始。今回、本社のモデルルームを訪問し、体験してきた。

ホームゲートウェイで一括管理 設定・操作は想像以上に簡単

モデルルームを案内してくれたのはFIRSTORDER事業部 PR部の窪恭平部長。玄関の扉を開けようとしてさっそくIoTポイントを発見した。鍵穴の上にテンキーが備わったパーツがくっついているのだ。「なるほど、鍵とパスワードの2通りの開け方があるわけか」と納得していると、窪部長が取り出したのはスマートフォン(スマホ)。なにやら操作すると、ガチャンと鍵が開錠した。

「このスマートロックは四つの開錠方法があります。従来の鍵、テンキーによる暗証番号、交通系のICカード、そしてスマホ。スマホであれば遠隔操作も可能なので、例えば留守中に友人や家族が遊びにきても鍵を開けることができます」(窪部長)。このスマートロックはTATERUの子会社ロボットホームが開発したもので、解錠ログの保存機能や不正に解錠されると警報音が作動する仕組みを搭載。開錠方法が多彩なだけでなく、セキュリティレベルも高い。

入室前から感心してしまったが、部屋に足を踏み入れると、IoTの香りがするデバイスがそこかしこに広がっている。「まずは何からいじったものか」と物色していると、窪部長がテレビ前の「Amazon Echo」に「アレクサ、ただいま」と声をかけた。すると、テレビ、エアコン、ライトのスイッチが一斉にオンに! 一瞬にして入室後の手間が省けてしまった。

これは「Amazon Echo」の特定ワードで複数のアクションが同時に動作する「定型アクション」、そしてスマートリモコン「NATURE SENSOR REMOTE CONTROLLER」の複合技だ。バックグラウンドでは、家のIoT機能を搭載しない家電のリモコン情報を「NATURE SENSOR REMOTE CONTROLLER」に登録、「Echo」の定型アクションに各家電の動作を登録、という二つのプログラムが走っている。逆の動作ももちろん可能で「アレクサ、いってきます」というと、連携機器の電源は揃ってオフになった。

家の中の接続機器の状態は備えつけのタブレット型ゲートウェイ「CENTRAL CONTROLLER」で確認できる。CENTRAL CONTROLLERからは家電を操作することもでき、細かく各機種の設定を調整したいときはスマートスピーカー経由よりもこちらの方が早そうだ。スマホアプリに同期するので、外出先からコントロールすることも可能。空気清浄機やロボット掃除機など、自分で購入したIoT製品を追加で登録することもできる。

賃貸オーナーも入居者も低コスト 管理会社にもメリット

「TATERU kit」の基本セットは、CENTRAL CONTROLLER、SMART LOCK、SMART LIGHT、NATURE SENSOR REMOTE CONTROLLER、TAG SECURITY(窓の防犯アイテム)の5アイテムで、1部屋あたりの受注単価は税別17万5000円。オプションで外出先から応答できるインターホンやカーテンの自動開閉デバイスなども用意する。

窪部長によると、IoT化によって家賃はおおむね5000円前後増額できるといい、初期投資は約4年で回収できる計算だ。入居者側にとっても、利便性に加えて一段上のセキュリティを確保できると考えれば、プラス5000円の価値はあるだろう。

入居予定者はガジェットファンやトレンドに敏感な人が多いのかというと、そういうわけでもないようだ。「性別・年齢はさまざまです。設置や設定はこちらでサポートするのでデジタルリテラシーはそこまで必要ありません。単純に利便性やセキュリティの高さを評価して、入居を決める方が多いです」と窪部長は説明する。

「TATERU kit」を導入した賃貸住宅は3月末時点で5000室が受注済み。12月までに1万室の受注を目指している。なおワンルーム以外での展開については、入居人数が増えるとリスクが増えるため、実現にはもう少し時間がかかりそうだという。

賃貸オーナーや入居者だけではなく、不動産仲介・管理会社にもメリットがありそうだ。CENTRAL CONTROLLERに備わっている管理会社のチャット機能でトラブル対応や退去時の連絡をしたり、内見時に物理的な鍵を用意する必要がなかったり業務を効率化するポイントが多くあるからだ。IoTによるスマートホームの実現は、生活だけでなく、不動産ビジネスにも影響を与えていきそうだ。(BCN・大蔵 大輔)