~良質な本物の怪談の世界へようこそ~「怪談えほん」シリーズ

続いては、「子どもたちに、もっと怖いお話を」と日本を代表する怪談文芸や怪奇幻想文学のプロフェッショナルたちが執筆している、岩崎書店の「怪談えほ ん」シリーズをご紹介します。こちらの「怪談えほん」、精神的にジワジワくるものから、夜眠れないこと間違いなしの怖さのものまで、数多くの傑作作品が出 版されているので、とてもおススメです!
 

 
 

まずご紹介したいのは、『ゆうれいのまち』(恒川光太郎/作 大畑いくの/ 絵)。日本ホラー小説大賞作家・恒川光太郎が「ひとりぼっち」をテーマに書いたお話です。

真夜中に友達に連れてこられて、ようやくたどりついた「ゆうれいのまち」。そこに行った子どもは、もう二度と戻ることができません。ゆうれいのまちで暮らし始め、徐々に今までの生活を忘れてしまう男の子の様子が描かれています。花いっぱいの、美しい表紙からは想像もできない、悪夢のようなラストが待っています。

 

 

同じく悪夢のようなラストを迎えるのが『悪い本』(宮部みゆき/作 吉田尚令/絵)。あなたに、この世で一番「悪いこと」を教えてくれます。そんな本いらないですか?でもあなたは絶対に「悪いこと」がしたくてたまらなくなるはずです。

また、小さい女の子「マイマイ」が自分の壊れた右目に弟の「ナイナイ」をいれて、不思議な世界を体験するという、美しくも不気味な物語『マイマイとナイナイ』(皆川博子/作 宇野亜喜良/絵)や、街中至る所におばけがはさまっていて、「痛い痛い」とおばけたちがあちこちで泣き叫ぶ様子が描かれている『ちょうつがい きいきい』(加門七海/作 軽部武宏/絵)も、内容はもちろん、絵のインパクトが印象的で、一度読むと決して忘れられない絵本です。

そして何といっても一番おススメなのが『いるの いないの』(京極夏彦/作 町田尚子/絵)。何かの事情で、おばあさんの住む古い日本家屋で暮らすことになった男の子が、高い天井を見上げ「何かいるような気がする」と訴えるストーリーです。しかしおばあさんは「上を見なければ怖くないよ」という何とも曖昧な返事をします……。

伝統的な日本家屋の、隙間の薄暗がりって確かに怖いですよね。さて、その家の暗がりには、一体誰がいるのでしょうか?空間の「こわさ」を徹底的に描き出した、子どもには決して見せていけないような気がする一冊です。