左から、瀬戸カトリーヌ、はしのえみ  撮影:源賀津己 左から、瀬戸カトリーヌ、はしのえみ  撮影:源賀津己

三谷幸喜が多大な影響を受けた作家として知られるレイ・クーニー。イギリスを代表する喜劇・笑劇作家である彼の代表作『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー~パパと呼ばないで~』が10年ぶりにパルコ・プロデュースで上演される。

舞台『イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー~パパと呼ばないで~』チケット情報

愛妻ローズマリー(瀬戸カトリーヌ)と順風満帆な生活を送るエリート医師のデーヴィッド・モーティマー(錦織一清)。彼は1時間後に権威ある記念公演でのスピーチをする予定。そこに、元看護婦の愛人・ジェーン(はしのえみ)が18年ぶりに登場する。しかも実はふたりの間には子どもができており、その息子(A.B.C.-Z 塚田僚一)も父親を探しに病院まで来ているという。慌てるデーヴィッドのもとにさらにクセのある登場人物たちがやってくるが、果たしてウソにウソを重ねる彼はこの場を乗り越えられるのか――。

「さまざまな役を演じてきたけれど、ここまで余すところなく笑いが散りばめられた芝居は初めて」と今回の挑戦を楽しみにしている様子の錦織。瀬戸は「私はいつも場をかき乱すようなアクの強い役柄を演じていたので、今回はエリート医師にふさわしい上品な妻・ローズマリー役と聞いてドキッとしました」と役柄に対する驚きを率直に話す。それに対し「私こそ、『抱きしめたくなるくらいかわいい女性』という役の説明文に大きなプレッシャーを感じています」と笑うはしの。

とはいえ、ともに舞台経験豊富な3人。コメディ作品で観客を笑わせることに挑む覚悟はそれぞれ十分にできている様子だ。錦織は「笑いって僕は“皮肉”だと思ってる。普通の人が遭遇する皮肉な状況を演じて楽しんでいただけたら」と語る。「レイ・クーニー作品は日常の会話劇に皮肉がたっぷり詰め込まれているそうです。品のいい妻というだけじゃない、その裏側がきっと描かれている。だから台本をしっかり読み込まなきゃ」と瀬戸。はしのは「一生懸命にお芝居をすればするほど滑稽さが見えてきて、それが観る方に伝わって楽しんでもらえると思う」と話した。

「舞台は生活の、身体の一部でありたいと思ってる。細胞の穴一個一個が開くような喜劇が大好き」と笑顔を見せる瀬戸に錦織も同意する。「僕もあるとき、稽古場で『なんてここは居心地がいいんだろう』と感じた。映画も大好きだけれど、舞台は自分に向いているんだろうと思う」。さらにはしのが「長い時間一緒にいられる舞台は楽しい」と語ると「ファミリーみたいになるよね」と瀬戸。「タイトルにファミリーがついているしね。うまくまとまった」と錦織が笑う。稽古前から息の合った3人の三角関係に期待が募る。

公演は9月20日(土)から10月13日(月・祝)まで東京・PARCO劇場にて。チケットの一般発売は7月26日(土)午前10時より。

取材・文:釣木文恵