ポーギー・フランセン

今後の活躍が期待される世界の新鋭監督が集まった“SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014”が29日に閉幕。同日、各部門の受賞作が発表され、メインとなる長編部門の最優秀作品賞の栄誉はオランダのディーテリク・エビンゲ監督の『約束のマッターホルン』が手にした。

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南米からアジアまで多様な国の精鋭が顔を揃えた今年の長編部門を制した『約束のマッターホルン』は、深い孤独の中にいる男と事故の後遺症で記憶障害の中にいる男の偶然の出会いから友愛が導かれる異色のドラマ。審査委員長を務めた映画プロデューサーの新藤次郎氏は受賞理由を「この作品の根底にあるのは“人は変われる”という実に深いテーマ。ともするとシビアになりがちな題材を軽妙に描いた監督の手腕は表現者として最上のもの」と監督の手腕を賞賛した。残念ながら欠席した監督に代わって登壇した主要キャストのポーギー・フランセンは「監督は今ごろ大喜びしているはず。彼に代わってお礼をいいたい」と笑顔をみせた。

一方、監督賞は日本の草野なつか監督が獲得した。SKIPシティアワードも合わせて受賞した彼女の初長編監督作品『螺旋銀河』は性格も容姿も正反対な女性ふたりの友情を独特の感性で描いた。審査員を務めた台湾の映画製作配給会社代表のジェームズ・リユー氏は「台湾での公開も視野に入れたい1作」と作品を絶賛。対して草野監督は「これからも作品を作り続けていきたい」と決意を語った。もうひとつの主要賞である脚本賞は、10代の初々しい恋の行方を描いたブラジル映画『彼の見つめる先に』が受賞。手がけたダニエル・ヒベイロ監督は「初の長編作品が評価されたことは自信になる」と語った。

また、今年から新設されたアニメ部門の最優秀作品賞は『夕化粧』の胡ゆぇんゆぇん監督が輝いた。なお各賞は以下の通り。

●長編部門(国際コンペティション)
最優秀作品賞:『約束のマッターホルン』(ディーデリク・エビンゲ監督)
監督賞:『螺旋銀河』(草野なつか監督)
脚本賞:『彼の見つめる先に』(ダニエル・ヒベイロ監督)
SKIPシティアワード:『螺旋銀河』(草野なつか監督)

●短編部門(国内コンペティション)
最優秀作品賞:『押し入れ女の幸福』(大橋隆行監督)
奨励賞:『ネクタイと壁』(山本亜希監督)/『帰ろうYO!』(松本卓也監督)

●アニメーション部門(国内コンペティション)
最優秀作品賞:『夕化粧』(胡ゆぇんゆぇん監督)
奨励賞:『Airy me』(久野遙子監督)/『就活狂想曲』(吉田まほ監督)

取材・文・写真:水上賢治