キャラメルボックス『TRUTH』 撮影:伊東和則 キャラメルボックス『TRUTH』 撮影:伊東和則

演劇集団キャラメルボックスの代表作『TRUTH』が、7月26日、東京・サンシャイン劇場で開幕した。15年前に初演、9年前に再演され、延べ9万人動員した人気作の3回目の上演。劇団創立から29年の歴史のなかで、もっとも熱狂的に観客に受け入れられた作品である。「キャラメルボックス初の悲劇」と銘打った、この幕末時代劇をひと言で語るなら、「壮絶」である。壮絶な生き様、壮絶なラストシーン。物語だけでなく、実際に繰り広げられる壮絶な戦いの数々。見応えがある、というような表現では収まりきらない。体力的にも、精神的にも、演じる俳優には大きな負担がのしかかる。

キャラメルボックス『TRUTH』チケット情報

慶応4年(1868年)、京から2年ぶりに江戸の藩邸へ帰ってきた上田藩士・野村弦次郎(畑中智行)は、倒幕のために立ち上がるべきだと、藩の仲間たちに訴える。一致団結しようと画策していたときに、隼助(左東広之)が改造した銃の暴発が原因で、弦次郎は聴力を失ってしまう。弦次郎は仲間の鏡吾(大内厚雄)に陥れられ、相手が親友の英之助(三浦剛)だと知らぬまま斬殺してしまい、追われる身となる。英之助の声が、弦次郎には届かなかったのだ。オープニングから、いきなりの大立ち回り。全編クライマックス。2時間、一瞬も息つく暇がない。

タイトルになっている「TRUTH」は、劇中では「誠のこころ」という意味だ。幕末を生きる6人の志士たちが、それぞれ思い抱く誠のこころ。その信念に嘘をつくことなく、突き進む姿は、若者特有の眩しさがあり美しい。しかし、まっすぐだからこそ、立場や身分の違いから生じたズレを修正することもできず、仲間同士で斬り合わなくてはいけない状況に追いこまれていく。

この作品の醍醐味は、壮絶な斬り合いから、すべてが生きることへと転化されるカタルシスがあることだ。希望ではないが、劇場を出るときに、自分にとっての「TRUTH」とはなにかを自問し、明日への活力が湧いてくる。幕末の過酷な物語を生き抜く彼らに嘘はない。それを目撃するためだけに、劇場に足を運ぶ価値はあるだろう。初日の幕が降り、緊張感溢れる客席から万雷の拍手喝采が沸き起こった。この瞬間があるから、明日の舞台も乗り越えられるのだ、といつも思う。

東京公演は8月17日(日)まで(東京公演中、9年前の鏡吾を描いた前日譚『涙を数える』を同時上演)。その後、『TRUTH』は、大阪・サンケイホールブリーゼでも上演予定。チケットぴあでは出演者との撮影会付チケットも発売。

文:プロデューサー 仲村和生