3D映像の次にアトラクション要素として映画興行界で期待されているのが、体感音響シート“Vsound”。この新たな座席は、自然な振動感で映像と調和し、観客の映像体験をより一層充実させる音響システムで、映画『GODZILLA ゴジラ』の公開に合わせてTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて日本で初めてテスト導入されている。
設置場所は、同劇場のメインスクリーンとなる7番スクリーンで38席が用意されている。“特許技術トランスデューサー・スプリング・クッション内蔵”などと聞くと、仰々しい装置の配置を想像してしまうが、座席自体はいたってシンプル。ブラックで統一された座席の見た目は、通常のものよりも背もたれ部分のクッションが厚く、ラグジュアリー感もある。
そしていざ、『GODZILLA ゴジラ』の上映。水爆のシーンで、地鳴りのような振動が走る。座席と映画のサウンドトラックが同期しているため、映像の衝撃とともに座席にも衝撃が広がり、画面をヘリコプターが横切れば「ババババ……」というホバリング音そのままの揺れが座席を襲う。このようにスクリーンで描かれる衝撃や重低音がそのまま座席に伝わる仕組みなのだが、その振動も映像の内容に沿ったものが用意されているという憎い演出。突き上げ型、さざ波型など数種類あり、それぞれの強弱パターンもあるようだ。
そして本作の見所であり感じどころでもある、巨大怪獣たちの登場シーン。不可解な巨大地震と原子炉の崩壊、そして人類およびゴジラの脅威となるムートーの覚醒シーンでは“Vsound”が大活躍。その不気味な振動によって、登場人物が置かれている状況と恐怖が手に取るようにわかる。サウンドトラックの同期と共に、キャラクターと観客の感情のリンクを、より強固なものとしてくれる。
そして日本が誇るキング・オブ・モンスター、ゴジラの登場である。本来ならば目と耳でしか察知できなかったゴジラの重量感が、全身で受け止められるのが素晴らしい。感激ポイントとしては「画面の外にゴジラがいる」と感じられる瞬間。画面の外から聞こえる足音は、通常の場合は音のみでしか表すことが出来ないが、“Vsound”ではそれが振動として体感出来るので「来る!来る!」感がより一層高められ、ゴジラが画面に映り込んできたときの興奮は、まさに「キター!」状態。ゴジラの咆哮にも「現実にいたらこんな感じなのか!」と、あまりの衝撃に座席にへばり付いてしまいそうに…。『GODZILLA ゴジラ』は破壊、崩壊、爆発オンパレードということもあり、“Vsound”との相性も抜群なのかもしれない。しかもこれだけのアトラクション体験が、入場料にたったプラス100円で体感できてしまうのも嬉しい。
目で観て、耳で聞くだけだった映画鑑賞に体感が付け加えられただけで、ここまでの臨場感と興奮が得られるとは驚きだ。3D映画のように“Vsound”鑑賞を前提に映画製作が行われる日も、そう遠くないのかもしれない。
『GODZILLA ゴジラ』
公開中
取材・文:石井隼人