自分の友だちがもし過去に大きな罪を犯していると知ったら?

――それでは、瑛太さん自身は、友だちがもし過去に大きな罪を犯していると知ったらどうしますか? それでも友だちを続けますか?

「う~ん、やっぱり距離はとるかもしれないですね。向き合うことはするかもしれないけれど、警戒心も生まれるし、それまでのような仲ではいられないから、やっぱり付き合い方が変わると思います。

それこそ、リアルに考えると、少年Aのような過去に殺人を犯したような人間を子供がいる自分の家に入れることはできなくなるので、僕はもしかしたら少しずつ距離を置いて、友だちをやめるかもしれないですね」

日々の生活を前向きに生きることができるモチベ―ジョンとは?

――「友罪」には、一方では「生きて欲しい」という願いのようなメッセージが込められています。

それに、5月は新しい生活を始めた人たちが自分の生き方を見つめ直す時期でもあると思うのですが、瑛太さんが仕事や日々の生活を前向きに生きることができるモチベ―ジョンは何でしょう?

「好きな人がいるってことじゃないですかね。

それは恋愛や夫婦生活、家庭や子供を持つということにも繋がるけれど、好きな人のためなら自分の身を削ることも苦にならないと思うんです。

具体的に言ってしまうと、僕は仕事をして子供たちを食べさせているし、いまは自分のためだけではなく、好きな人たちのために頑張っているところがありますね。

それに僕は好きなことがいっぱいあって、スポーツもいろいろやるし、山に登ったりもするけれど、俳優という仕事も自分の中に刺激物として入ってくるその中のひとつで。

休みは休みでもちろん自分の趣味で時間を潰したり、家族でのんびり過ごすこともあります。

ただ、俳優という仕事はどこか中毒性もあるから、やっていないとサボっている感覚になるし、現場で芝居をしていないと心が落ち着かなくてザワつくんですよ(笑)。

それこそ高校1年のときにサッカーで挫折して、スーパーの品出しやお肉屋さんの皿洗いなどいろんなバイトをしたんですけど、どれも1ヶ月しか続かなかった。僕、たぶん飽きっぽいんでしょうね。

バイトを1ヶ月やって給料を貰うとヘンな達成感があって、やめちゃっていたから。

それで趣味で映画を観始めて、そのうちに現実から逃れることができるのは俳優なんじゃないか? と思ったことからこの道に進んだんですけど、いろいろな人を生きられるこの仕事は飽きっぽい自分にはけっこう向いているんじゃないかなと最近思うようになったんです(笑)。

撮影現場が自分のいちばん好きな場所で、自分がいちばん楽しいのは演じているときなんじゃないかなという気がいまはしているんですよね」

口数が決して多い人ではないけれど、それでも、答えにくいこちらの質問に真摯に自分の言葉で対応してくれた瑛太さん。

そこには役者の仕事に対する彼の確固たるスタンスやこだわりが見え隠れして、静かな口調の中に熱いものを感じる瞬間も。

時折交えながら独特のユーモアには茶目っ気もあって、最後の「自分がいちばん楽しいのは演じているとき」と語ったときの少年のような悪戯な笑顔は、彼自身の言葉に嘘がないことを物語っていた。

果たして瑛太は、次はどんな顔でどんな人生を生きて、私たちを驚かせてくれるのだろう? この先もずっと見続けていたい俳優のひとりだ。

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。