萩尾望都の漫画にインスパイアされた野田が、萩尾と共に脚本を手がけ、劇団夢の遊眠社で1986年に発表した名作『半神』が、中屋敷法仁演出で新たに上演される。

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主人公は結合双生児のシュラとマリア。シュラが、高い知能を持つが醜く愛を知らないのに対して、マリアは、知能は低いが美しく誰からも愛されている。しかし、ふたりを切り離し、どちらかひとりを生き永らえさせなければ、彼女達の命は共に尽きてしまうことが判明し……。

今回、シュラに扮するのは桜井玲香。乃木坂46のキャプテンとして活躍しながら、舞台出演も重ねている。「アイドルとして活動していると、自分の個性や存在感を出す上で悩むことも多いのですが、それがシュラの悩みや苦しみともどこかリンクします。同い年の女の子とずっと一緒に演じるのはこれが初めて。さわちゃん(爽子)が良い子だったので安心しています(笑)」

一方、マリア役は藤間爽子だ。祖母・藤間紫が創始した日本舞踊・紫派藤間流の次期家元として研鑽を積みながら、女優として活動。阿佐ヶ谷スパイダースへのメンバー入りも決まる中、今回、現代劇での初舞台を踏む。「初舞台で不安もありますが、楽しみたいです。誰からも愛されるアイドルである桜井さんがシュラで、私がマリア。私はどちらかと言うとアクがあるタイプなのですが、それを封印し、桜井さんから愛される秘訣を学びたいですね」

年齢に加え、身長もほぼ同じだというふたり。中屋敷は「おふたりとも舞台女優で、違う芸能をなさっています。そして、どちらも集団でやる芸能であり、愛される責任のある仕事だという共通点がある。野田戯曲は、答えを僕らが提示するのではなく、お客さんに投げかけるものだと思うので、おふたりが、自分の面白さや可愛さを見てほしいというパフォーマーではなく、素直な体と素直な声を持っていることがとても頼もしいです」と述べる。ふたりも「日本舞踊をやっているさわちゃんはやっぱり所作がきれい。女性らしい所作を学びたいです」(桜井)、「日本舞踊は基本的に重心が下ですが、ダンスは上。乃木坂46の皆さんのダンスを見ると、どうしてあんなに早く動けるのだろう?と気になります」(爽子)と、お互いに刺激を受けている様子。

初演から32年。2018年に、この作品はどう響くだろうか。「僕は演劇の楽しみって、人間の残酷さに気付くのではなく、自分の残虐性に出会うことだと思うんです。『半神』も、さっと読むと美しいけれど、その奥から気持ち悪いもの、グロテスクなものが飛び出してきます。一方で、劇中で化け物として登場するガブリエルにしろスフィンクスにしろ、神に通じる存在なので美しいはず。シュラとマリアも単純な美醜で分けず、価値観を揺さぶるかたちにしたいですね。今なお現代的なこの戯曲を、新作のように上演したいと考えています」(中屋敷)

『半神』は7月12日(木)から16日(月)まで東京・天王洲銀河劇場にて。一般発売は6月10日(日)より。なお、ぴあでは5月29日(火)午後11時59分までプレリザーブを実施中。

取材・文:高橋彩子

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