(c)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC
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 一方、脚本を書いたダスティン・ランス・ブラックはこう証言する。
「クリントが僕の脚本に興味を示していると聞いたときは驚いたよ。彼とは電話で長時間話し合った。本当にいろんなことを質問されたけど、唯一彼が訊ねなかったことがふたりの愛についてだった。不思議だったけど、その謎はすぐに解けたんだ。彼はその愛を、どんなそれとも同じように描いてくれたからだよ」
ランス・ブラックは、政界初のゲイの活動家を描いた『ミルク』でアカデミー脚本賞を受賞し、自らもカミングアウトしているシナリオライター。その感性でふたりのミステリアスな関係をラブ・ストーリーにまで昇華させているのだ。
そして、もちろん、でき上がった映画もラブ・ストーリーになっている。自分のセクシュアリティを公にできなかった時代の、ふたりの関係のミステリアスな部分は残し、それでも彼らがお互いを必要としたことは伝わるよう、優しく切なく描いている。まるで普通の愛と同じように! 
権力を誇示し、権力に執着し、最後まで権力を握っていたエドガーを世紀の悪人と呼ぶ人も多い。だが、イーストウッドはそんな人物の私生活を描くことで、人間らしさを浮かび上がらせているのだ。男同士のラブ・ストーリーを取り上げるだけでも冒険なのに、その対象がそんな人物である。イーストウッドの創作意欲の広さに驚くばかりではないか。
ちなみに、レオの相手役(?)を務めるアーミー・ハマーのハンサムっぷりにびっくり。しかもイーストウッド、ちゃんと美しく撮っているし。

 

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エドガーを演じるレオは彼の20代から70代までを熱演。老境に入ってからは老けメイクを使っているが、これがフィリップ・シーモア・ホフマンにそっくり! シリアス路線を貫く本作の唯一のユーモア(?)なのでした。