デクスター・フレッチャー監督

スコットランド発の大ヒットミュージカルを映画化した『サンシャイン/歌声が響く街』が公開となる。メガホンを執ったのは本作が長編2作目の監督となるデクスター・フレッチャー。この男、実は日本の映画ファンにもおなじみの“あの”名作に出演していた俳優である…。

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スコットランド版「マンマ・ミーア!」と称されたミュージカルを映画化した本作。同国の国民的バンド「プロクレイマーズ」の数々の名曲に乗せ、結婚25年目にして危機を迎えたカップル、戦争の傷が癒えない息子、広い世界を夢見る娘ら、それぞれの人生の決断と一歩を描き出していく。

本作を語る前に、ドクロのワンポイントのネクタイを締め、ヨレヨレに見えて実はブランドのスーツを着こなしてソファに腰掛けるこの男について。日本でも人気のガイ・リッチー監督作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で、主人公&悪友の4人組のひとりを演じたのがフレッチャーだ。その証拠に…というわけでもないが、本作には『ロック、ストック…』で仲間のひとりを演じたジェイソン・フレミングも出演。ちなみにフレミングが演じた役は、舞台版には登場しない映画オリジナルの人物である。

なぜロンドン出身の彼の元にスコットランドを舞台にしたミュージカル映画の依頼が届いたのか? 「プロデューサーがデビュー作『ワイルド・ビル』(※英国アカデミー賞最優秀新人映画部門ノミネート)を観てくれて、聡明で趣味も良かったようで(笑)、僕を選んでくれたんだ」とは彼の弁。その時点で舞台を元にした映画用の脚本が出来上がっていた。「ただ、映画は舞台版とは別の音楽監督がいたので、彼と映画用に音楽をアレンジし、同時にシーンやキャラクターについて自分なりの変更を加えていったんだ。だから映画版は僕の“ハート”がしっかりと反映されていると思うよ。フレミングが演じた新たなキャラクターも含めてね」。

音楽やエディンバラの街も魅力的だが、彼の視点や手腕が光るのは女性監督と見まがうような強く、美しい女性たちの描写である。「映画に出てくる女性たちはみんな、自分の人生の選択を自分でしているし、その身に何が起きても決して“被害者”扱いされるような女性はひとりもいない。それは僕自身の妻との関係――妻は男社会のオペラのカンパニーで演出家をしてるんだ――が影響しているかもしれないし、労働者が多く暮らすロンドンのイーストエンドで強く生きる、尊敬する90代の祖母の存在も関係しているのかもしれない。何より、映画を作る上では常に“愛”や“希望”を描くことを大切にしているんだ」。

『サンシャイン/歌声が響く街』
8月1日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー

取材・文・写真:黒豆直樹

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