『友よ、さらばと言おう』を手がけたフレッド・カヴァイエ監督

本作の主人公はかつてコンビを組んでいた刑事シモンとフランクだ。彼らは家族ぐるみのつきあいをしながら日々を過ごしていたが、ふたりの乗っていた自動車が人身事故を起こしてしまい、運転席にいたシモンは職を失い、家族を失い、刑務所で6年を過ごす。映画は、出所後に冴えない日々を送っていたシモンの息子が偶然に麻薬密売グループの殺しを目撃し、命を狙われたことから、ふたりが後ろ盾のない状態でマフィアに戦いを挑む姿を描く。

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本作では男たちの友情ドラマとハリウッド映画を思わせるアクションが見事に融合している。「フランス映画でアクションは少数派で、いまだに人間ドラマが圧倒的多数です。だから私はこのふたつを同時に描くことに関心があります」。しかも本作の上映時間は90分だ。「ストーリーを語るために本当に必要なものだけを残して、映画のスピードアップを図っています。もちろん、長い映画が悪いわけじゃないですよ。タランティーノ監督の映画は長いけど退屈しないし、本当に効果的に時間が使われていますから」。

さらに監督は以前から“観客の記憶”を引き出すことで物語を手際よく語り、観る者を惹きつけたいと語る。「映画の内容と観客の記憶が“共鳴”しあえる作品に魅力を感じます。私はアクションを描きながら同時に観客に感情移入して観てもらいたいと思っていますから、観客が納得できる理由でアクションが展開されなければならないのです」。カヴァイエ作品ではハードなアクションが繰り広げられるが、主人公はいつも“普通の人”だ。本作でも職業こそ刑事だが、極めて普通の子どもを愛する父親として描かれている。「主人公を父親にすることで観客はキャラクターに感情移入できますし、子どもを登場させることで観客から様々な感情を引き出すことができます。ある場面では自分が小さかったときのことを思い出すでしょうし、危険な場面では大人よりも子どもに対してより強い不安を感じるでしょう」。

クールなアクションと観客が共感できるドラマを過不足なく描き出すカヴァイエ監督の才能はすでにフランス以外でも注目を集めており、ハリウッドの大手スタジオと新作の準備も進んでいるという。「私の作品はいつも“映画館で観る”ことを前提に作られています。映像もサウンド・デザインもすべて小さなモニターではなく、映画館の大きなスクリーンでいきるようになっていますから、本作もぜひ大きな画面で楽しんでほしいです」

『友よ、さらばと言おう』
8月1日(金)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開