1984年生まれのイギリス人劇作家ルーシー・カークウッドが2016年に発表した三人芝居『チルドレン』が、栗山民也演出で日本初演される。

舞台は、巨大地震の影響で大津波が起き、原発事故が起きた町。津波で浸水した家を離れて避難した核技術者同士の夫婦ヘイゼル(高畑淳子)とロビン(鶴見辰吾)のコテージに、かつての同僚ローズ(若村麻由美)が、ある提案を胸にやって来る…。初めての本読みを翌日に控えた高畑、鶴見、若村に聞いた。

「イギリスって本当に演劇好きな国だなあと感じます」と作者の劇作術にうなるのは、高畑。「私達が演じるのは、人生の酸いも甘いも知り尽くした60代の日常。その会話を楽しんでもらいつつ、そこにいくのか!という展開がとてもドラマティックなんです」

一方、鶴見は日本での上演の意義に注目する。「この戯曲は福島のことを考えて書かれたと思うのですが、我々が逆輸入で演じることで、より広い視野で、エネルギーの問題や人生、子供の教育などについて、演劇を見る面白さと共にお客さんに考えていただけたら嬉しいです」

若村も「多面的で多層的な本です」と目を輝かせる。「私は3.11を機に、今日を大事にしなければという思いが強くなりましたが、この作品には、今を生きる私達の問題が詰め込まれている。自分だったら・・・という感覚でご覧いただければと思います」

それぞれ共演経験がある高畑、鶴見、若村だが、三人一緒の舞台は初めて。「三人芝居には、ひとりが外れるとすぐ重心が変わる面白さがあります。ヘイゼルとロビンとローズは三角関係なのに、男性がいないと女性同士に共通する感情が湧くんですよね」と若村が言えば、「同じ青春時代を過ごした三人の空気が醸し出せたらいいよね。そして三人だからこその化学変化を出したい。高畑さん、若村さん、僕のこんな部分が出ちゃった、というのを見せられれば」と鶴見が意気込み、「演出の栗山さんがちゃんと見ていてくださるから、私達は大いに探して試したいですね。実際、わからないことがあっても恐れずに探せる三人だと思う」と早くも手応えを感じている様子。

「色々なことが日常にまぶされているから、読みながら涙が止まらなくなってしまう場面もあります。“妙齢”な人達の話だと思って観ていたらとんでもないところに連れて行かれた、という感じになればと思います」(高畑)
「観たあとに、このお芝居について誰かと話したくなる、しかもその日だけではなく何日も余韻の残る作品だと思うので、ぜひ友達や恋人や親子で観ていただき、たくさん喋ってほしいですね」(若村)
「恋愛ドラマだったり科学的な話だったりと、人によって見え方にバリエーションがある芝居にしたいです。芝居を観ることって、物事の捉え方が変わるような大きな経験ですから、特に若い人の人生の指針になる舞台にできたら最高ですよね」(鶴見)

公演は9月8日(土)埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホールより。その後、 全国を周る。

取材・文:高橋彩子