「ショーストッパー」とは「拍手喝采のあまり進行が中断してしまうほどの名演技」の意味だ。6月1日、初日の幕を開けた「SHOW STOPPERS!!」はまさにその言葉通り、出演者14人のエンターテイナー魂が如何なく発揮された舞台だった。タカラヅカOGとLE VELVETSのメンバーが全56曲を歌い踊る華やかなステージ。宝塚歌劇団の三木章雄による愛情あふれる演出が、ひとりひとりの個性を生かしている。
1幕「SHOW TUNE」はブロードウェイの作曲家ジェリー・ハーマンの名曲を集めたミュージカルで、10年前に好評を博したものの再演だ。『ラ・カージュ・オ・フォール』より、乙女心を胸に秘め鏡に向かって化粧に余念がないザザ(湖月わたる)。『マック&メイベル』より、マック・セネット(宮原浩暢)の映画撮影現場での女優メイベル(貴城けい)。『ハロー・ドーリー!』『メイム』より、仲が良すぎて軽口を叩きあうドーリー(彩輝なお)とメイム(壮一帆)など、作品を彷彿とさせるユーモラスなシーンが楽しい。『LE VELVETS』(宮原浩暢・佐賀龍彦・日野真一郎・佐藤隆紀)とのデュエットでは、元男役の面々も一段とエレガントさが増して見える。
そして2幕「SHOW TIME」は、『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』からディズニーまで、ミュージカルファンには耳馴染みの楽曲で盛り上がる。初日のゲストコーナーでは北翔海莉が登場し、宝塚時代に相手役を務めていた妃海風も大喜び。久々のコンビ復活と、「これが聴きたかった!」という選曲に客席も湧いた。このコーナーでは今後、姿月あさと・春野寿美礼・大和悠河も日替わりで登場予定だ。『The Musical by Ladys』ではOG在団中の名場面を思い出させてくれるシーンもあるいっぽうで、『Diva』では、女優としてそれぞれの道で活躍中のOGが世界の女性シンガーの歌を熱唱し成長ぶりを見せる。また『The Musical by LE VELVETS』では『スカーレット・ピンパーネル』『グランドホテル』『マタ・ハリ』など『LE VELVETS』メンバーゆかりの楽曲が聴けるのも嬉しい。
ただひとりの元・娘役トップ妃海風がソロで、時に男性陣も引き連れてパワフルに歌い踊っていたのが印象的。また、宝塚時代から歌やダンスに定評ある牧勢海・珠洲春希・舞城のどか・桜一花の4名も要所要所に見せ場がある。カーテンコールも湖月の見事な仕切りとメンバーの阿吽の呼吸で和やかに進行し、LE VELVETSメンバーも「こんなに踊ってしまいました」と笑わせた。客席からの温かい拍手がとても心地よい舞台だった。
公演は6月8日(金)まで東京・東京国際フォーラム ホールC、19日(火) から24(日)まで、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。
取材・文:中本 千晶