左から、濱田めぐみ、安蘭けい、渡辺美里 左から、濱田めぐみ、安蘭けい、渡辺美里

2年前の日本版初演時、メインキャストの“最強の3人”が大きな話題を呼んだミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』。その再演の報に、彼女たち……安蘭けい、濱田めぐみ、そして渡辺美里の美声合戦をまた見られることを楽しみにしている人も多いだろう。本作は、あの『不思議の国のアリス』の物語を現代に置き換え、ヒットメーカーのフランク・ワイルドホーンが作曲を担当。ブロードウェイ版に続いて上演された日本版でも、抜群の歌唱力を持つ安蘭らがパワフルな楽曲を歌い上げ、一方で鈴木裕美の演出による日本版だけのほろ苦いラストが好評を博してスマッシュヒットとなった。

ミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』チケット情報

主人公はスランプ気味の小説家アリス(安蘭)。ヤケ酒を飲んで帰宅したアリスに、別居中の夫ジャック(石川禅)と娘のクロエ(唯月ふうか)はあきれ顔だ。その夜、目を覚ましたアリスは、クロエと白いウサギ(平方元基)を追って不思議な世界へ紛れ込む。そこにいたのは、哲学者ぶった芋虫(新納慎也)や、キザな猫エル・ガト(小野田龍之介)、ジャックに似た白のナイト(石川禅・二役)たち。彼らと一緒に帽子屋(濱田)のイカれたお茶会に出向いたアリスはハートの女王(渡辺)に出会うが、周囲が慌ただしくなるなか、次第に帽子屋の正体がある人物だということに気づき…。

安蘭は「アリスとしては人生の問題が山積みで、常に真剣な気持で動いているんですけど、見ているほうはどこかその姿が笑えるんですよね。再演までの2年間に私も色んなお芝居をさせていただいたので、さらにアリスの葛藤を深めてお伝えできれば」と話す。一方の濱田が演じる帽子屋は、実はアリスのネガティブな内面を表している存在だ。「初演の時は、抽象的な存在を演じるってどうすればいいの?と戸惑いました」と濱田は言うが、「再演って初演より俯瞰で作品を見渡せるのがいいですよね。もっと意地悪に、さらにゴージャスに、アリスとハートの女王を攻めたいと思います」と笑顔で話した。

また本作がミュージカル初挑戦だった渡辺。「公演中は舞台上でも舞台袖でも楽しくて、他の方のシーンをワクワクしながら見ていました。稽古場では厳しい鈴木さんから何も指示がなかったので“ワタシ大丈夫なのかしら…”と思ったけれど」と言う渡辺に、「役柄そのままに存在感が圧倒的だったからですよ!」と返す濱田。それを聞いてもなお「再演の稽古場ではシゴかれるかも。いくらでも(ダメ出しの)“球”は打ち返しますよ!」と役者魂を燃やす渡辺に、思わず安蘭と濱田が笑いだすひと幕も。ビターな現実とワクワクするような冒険が共存する、大人による大人のためのミュージカル。ぜひ待望の再演を見逃さないでほしい。

公演は11月9日(日)から30日(日)まで東京・青山劇場、12月5日(金)から7日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、12月19日(金)・20日(土)に愛知・中日劇場にて。

取材・文:佐藤さくら