うだるような暑さが続く日本の夏。“怖い話で盛り上がる”のは昔の人が編み出した伝統的な納涼方法だが、最近はテレビ局の自主規制などで心霊番組・ホラー映画の放送がめっきり減ってしまった。

そこで今回は存分に涼んでもらうため、怖い!とファンから太鼓判を押されているホラー漫画 4タイトルを紹介。どのくらい怖いのかを“ホラー好きな小心者”の記者がビビった度合いとして付記してあるので、ご参考にしていただきたい。
 

 

ヒトの本能をえぐる“不条理ホラー”の傑作 ――『不安の種』

時代は昭和または平成。場所は日本のあちこち。老若男女さまざまな人の日常に、突如として“異質な存在”が紛れ込む怖さを描いた短編ホラー。固定の主人公はおらずエピソードごとに交替する。

わずか2~5ページほどで終わるエピソードが多く、たとえば「下校する少女の背後に“何か”が立っていて、裁縫用ハサミで少女の耳を切り落とす」といった話。文字だけでは伝わりにくいが、実に不安をかき立てられる内容だ。

背後にいたのは人なのかバケモノなのか? なんの目的で耳を切り落とすのか? 被害を受けた少女はその後どうなるのか? ……読んだ人間なら当然浮かぶであろう疑問に答えが提示されず、読者はタイトル通り『不安の種』を抱えたまま次のエピソードに投げ込まれる。

「暗闇への恐怖」「人のような姿をした何者かへの恐怖」「自分だけが狙われる恐怖」「動機がわからないことへの恐怖」「解決方法が示されない恐怖」など、ヒトが本能的に持っているあらゆる恐怖心のツボを作者・中山昌亮氏は的確に攻撃してくる。

不条理系のトラウマホラー作品としてネット上ではカルトな人気を誇り、好評のうちにシリーズ通算7巻(全3巻+続編4巻)で終了。2013年には実写映画化もされた。こちらのサイトで約50ページを試し読みできるので、夜間に冷房を効かせながら“不安”に苛まれてみてはいかがだろうか。

【怖さ評価】4/5 ★★★★☆
【備考】『呪怨』シリーズを難なく視聴できる記者が押入れのわずかな隙間に怯えはじめるレベル