宝塚歌劇団雪組トップスター・望海風斗が、名作と語り継がれてきたミュージカル・プレイ『凱旋門』の再演で、専科の轟悠と共演する。轟は2000年の雪組初演にも主演し、同作で文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞。望海は「男役の誰もが背中を追いかける立場の方とお芝居させていただくのは、いつも以上に緊張するだろうと思っていたのですが、轟さんは色々なお話をして(心を)ほぐして下さるので、稽古場が明るくて楽しいです」と穏やかに語る。

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本作は文豪エリッヒ・マリア・レマルクの小説を、柴田侑宏の脚本、謝珠栄による演出・振付で世界初ミュージカル化した作品。第2次世界大戦前のパリに集う人々が、ひと筋の希望を見出そうとする感動作だ。望海演じるボリス・モロゾフは、ロシア革命から逃れてきた軍人。「まずロシア革命を知らなければと思い、資料を探し、ロシアものの映画を観て勉強しました。ボリスはロシア人らしく、自分の人生に哲学を持っている人。様々な経験をした身としてラヴィック(轟)を心配し、見守っているのを原作から感じました」

再演ではセットや振付が変わり、故寺田瀧雄の名曲はそのままに、「ジャジーな新しいナンバー」が加わる。宝塚大劇場で開催された『凱旋門』前夜祭で、早くも力強い歌声を披露した望海。「謝先生と相談し歌ったソロからも、私が思っていたボリス像と少し違い、ちょっと豪快な人なのかなと思いました」。運命的な恋や復讐に傾いてゆく親友ラヴィックと違い、「ボリスは何にもすがらず“人生はこんなもんさ!”と生きていける人ではないかと。彼の人生の背景まで滲み出すことができれば」と、演技派ならではの目線で深めている。

第2幕のショー・パッショナブル『Gato Bonito!!』は、“ガート・ボニート(美しい猫)”をモチーフにしたラテン・ショー。「自分のペースがあり、わりと気まぐれなところは自分でも猫っぽいなと思います(笑)。ヤンさん(ANJU)振付の場面があるのですが、きっちりと組んで踊るアルゼンチンタンゴは今までなかったので挑戦です」と意気込む。踊りの相手はトップ娘役の真彩希帆。「彼女はとても生命力に溢れ、未知数なところが良いと思います。今の雪組はひとりひとりがエネルギーをもって務めてくれていて、感謝しています」

トップスターに就任して間もなく1年、いい意味で肩の力が抜けてきたという。「舞台はみんなの“やりたい!”という気持ちが動いて作れるもの。私も常にその気持ちをもって舞台に立ちたいです」

公演は6月8日(金)から7月9日(月)まで、兵庫・宝塚大劇場、7月27日(金)から9月2日(日)まで、東京・東京宝塚劇場にて。

取材・文:小野寺亜紀