東芝のPC事業を買収したシャープの戴正呉社長

シャープは6月5日、東芝の100%子会社でPC事業を手がける東芝クライアントソリューション(TCS)を約40億円で買収する契約を締結したと発表した。TCSの株式80.1%を東芝から取得して子会社化する。株式取得の実行日は10月1日の予定。

シャープは2000年代に薄型・軽量ノートPCの「メビウス」などノートPC事業を展開したが、10年に撤退して以来、8年ぶりの再参入となる。TCSがもつPC事業のほか、IoTや5G(第5世代)時代のモバイル機器の要となるエッジコンピューティング技術、ドライブレコーダー事業を継承。東芝のノートPC「dynabook」をはじめとした製品やブランド、IT技術者、技術、海外の製造・販売チャネルを手に入れる。

東芝は、85年に世界初のノートPCを発売して以来、PC市場をデスクトップPCからノートPCに塗り替え、90年代にノートPCで世界シェアトップまで上り詰めた歴史をもつ。しかし、ここ数年は海外新興メーカーの参入やスマートフォンなど新規デバイスの普及によるPC市場の縮小が影響してPC事業の赤字が続いた。なお、昨年度(18年3月期)は、PC事業の売上高が1468億8100万円(前期比11.1%減)と下がり、営業損益がマイナス83億7500万円(前期はマイナス17億6800万円)と赤字幅が広がった。

シャープ製の「TOSHIBA」「dynabook」

新製品の発売など、シャープが今後どのようにPC事業を手がけていくか詳細は明らかになってないが、シャープ関係者によると家電量販店などの店頭では「TOSHIBA」と「dynabook」のブランドを当面残して販売するという。製造元で80.1%の株式をもつシャープが、これまでのブランドをグリップする形になる。

また、シャープによるノートPCの生産体制はおおむね次のようになる模様。ノートPCのアッセンブリは、TCSと同じく中国の東芝情報機器杭州社がもつ製造拠点を活用する。シャープの親会社である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は、グローバルの調達力を生かしたコスト競争力のあるデバイスを供給。シャープは、三重県亀山市の亀山工場で製造する液晶ディスプレイやセンサなどを供給する。

さらに、10月1日の実行日までに東芝やTCSの海外子会社6社をTCSに一本化したうえでシャープの関係会社になることが発表された。東芝の子会社である中国の東芝情報機器杭州社、豪州のTCS豪州社、カナダのTCSカナダ社の3社をTCS傘下の子会社に異動するほか、東芝の子会社である米国の東芝アメリカ情報システム社と東芝システム欧州社、東芝シンガポール社の3社のPC事業をTCS傘下に今後設立する子会社に譲渡する。TCSが6社を子会社にしたうえで、10月1日にシャープはTCSを子会社化する。

今回の買収は、ノートPCのブランド力をそのまま活用しつつ、シャープに不足するIT技術者の人材確保が狙いとしてあるようだ。IoTや5Gの普及をにらみ、シャープはAIとIoTを組み合わせた「AIoTプラットフォーム」を掲げている。このプラットフォームを広めていくには、端末側の高度なコンピューティング技術が必要になってくるということだ。(BCN・細田 立圭志)

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