パルコ・ミュージック・ステージ KOKI MITANI'S 『ショーガール』稽古場より パルコ・ミュージック・ステージ KOKI MITANI'S 『ショーガール』稽古場より

三谷幸喜の作・演出、川平慈英、シルビア・グラブの出演による『ショーガール』が8月21日夜10時、PARCO劇場にて開幕する。かつて木の実ナナと細川俊之の出演、福田陽一郎の脚本・構成・演出でシリーズ上演された伝説の舞台を、三谷がリスペクトをこめてタイトルはそのままに復活。「ミュージカルシーンに新たな革命を起こしたい」(シルビア)「ミュージカル界の可能性を広げるエポックメーキングな舞台になれば」(川平)「どうだ!ってくらいシャレのめした舞台にします」(三谷)と、以前の取材で三者から飛び出したのは並々ならぬ熱血宣言。気になる奮闘状況を確かめに、ある日の稽古場を訪れた。

『ショーガール』チケット情報

稽古場に組まれていたのは舞台『君となら』のお茶の間のセットだ。『君となら』の終演後に上演される本番同様に、『ショーガール』の稽古開始直前までは、同じ場所で『君となら』の稽古が行われていたのである。よって川平&シルビアの両人を待ち構える三谷は、すでにひと仕事を終えたようなリラックスムード。方や、別室で歌とダンスの個人練習を終えて稽古場にやってきた川平とシルビアは、音楽担当の荻野清子と音合わせを始めている。自分たちのやるべきことをサッサと進めるキャスト2名と、そんな彼らを腰に手を当て仁王立ちしてみつめる演出家。やがて懐かしのジャジーなメドレーが、2人の見事なハーモニーから繰り出されてきた。どれも聞き覚えのあるナンバーで、とくに30代以上の観客ならすぐさま心を捕まれること間違いなしだ。気持ちよく体を揺らして聴き入りながら、ふと演出家を見ると、その表情にも“勝算アリ!”の不敵な笑みが広がっている。しかし、ここでも余計な口出しはしない。なるほど、これが大人の稽古場というものか。

贅沢なライブのような歌稽古の後、お茶の間のちゃぶ台が取っ払われ、2台のマイクスタンドが立てられた。いよいよ本格的な稽古が!と期待集中。三谷がこのステージのために書き下ろした戯曲のタイトルは『淋しい探偵』だ。ミステリー調の粋なストーリーを予想して身を乗り出す中、川平とシルビアはセット上での動きのきっかけを細かく確認し始めた。三谷も彼らの動きを見て頷きながら「そこは右かな」などと指示。おお、大人の稽古場で初めて演出家のディレクションが! と感激したのもつかの間、動きの確認は素早く終了。あれ、『淋しい探偵』はいったい…!?  川平とシルビアの豊かな表情&全身演技は、稽古着スタイルでも十分に愉快でゴージャスだ。振りを間違えた川平が「あーっ!」と雄叫びをあげるのを微笑ましく見ていたその時、突然三谷から声をかけられた。「あの……今日は自主稽古の日なんですよ。『君となら』の稽古が終わって、僕はもう帰るつもりだったけど、なんとなく見てしまってまして……。」

そうでしたか……。いつもと違う稽古場の雰囲気にやっと合点がいきました……。大人の稽古場の謎は解けたが、『淋しい探偵』の全容は謎に包まれたまま。三谷が仕掛ける “大人の時間”の衝撃、その正体は、真夏の夜の劇場で確かめるしか術はない。

取材・文 上野紀子

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