ドスパラ八王子店は、八王子駅周辺で唯一のパソコン専門店として、地元住民のパソコンに関する悩みの解決にあたっている。駅前には大規模な家電量販店があるが、低価格のオリジナルブランドモデルや通販サイトの上海問屋が提供するユニークな雑貨など、他店とは一線を画した商品を武器に、パソコンの上級者から初級者まで、幅広いお客様を獲得。パソコン生活の指南役として、お客様が信頼を寄せる店舗だ。(取材・文/佐相彰彦)

ドスパラ八王子店

店舗データ

住所 東京都八王子市旭町12-6 JIビル1F

オープン日 2004年6月11日(移転)

売り場面積 約130m2

従業員数 5人

●多摩地区で最大の都市・八王子 客層の中心が初級者のパソコン専門店

56万余という多摩地区最大の人口を抱える八王子市。中心地のJR八王子駅は中央本線・横浜線・八高線が通るターミナルで、京王線の京王八王子駅も歩いて数分のところにある。駅周辺には京王百貨店セレオ八王子や八王子東急スクエアなどの百貨店のほか、複合商業施設や飲食店が多い。繁華街・オフィス街も地区最大だ。

家電量販店では、駅前にヨドバシカメラ八王子店、ビックカメラJR八王子駅店などの大型店舗が出店し、多くのお客様を獲得している。また、東京都内で奥多摩町に次ぐ広い市域をもつ八王子には、郊外にも複数の家電量販店が出店している。八王子を本拠地とするムラウチ電気は、上新電機とフランチャイズ契約を結び、2009年にムラウチジョーシン八王子本店をオープン。白物家電を中心に、大和田町の住民を常連として確保している。八王子バイパス沿いにはケーズデンキ八王子店、JR西八王子駅近くの国道20号沿いにはノジマ西八王子店が店を構える。

こうした状況のなかで、ことパソコンに関しては、多くのユーザーが絶大の信頼を寄せているのが、パソコン専門店のドスパラ八王子店だ。2002年に、八王子駅北口から八日町方面に向かう歩行者専用道路・ユーロード沿いにDOS/Vパラダイス八王子店の名前でオープン。2004年に、JR八王子駅と京王八王子駅の中間にあたる旭町に移転した。この移転が功を奏して、現在は平日・休日ともにコンスタントにお客様が来店している。

ドスパラ八王子店の田中伸武店長は、「お客様にパソコンの上級者が多いドスパラには珍しく、当店は初級者が中心。しかも比較的高齢の方が多い」と、八王子店の客層を説明する。

●お客様の質問に的確に回答 ニーズを満たす豊富な品揃え

ドスパラ八王子店の客層は、40~50代の男性の会社員が2割強、ネットゲームをスムーズに動かしてプレーしたいという学生を中心としたパソコンの上級者が2割強、残りがパソコンにあまりくわしくない初級者だ。

なぜ、比較的年齢の高い層を獲得できているのか。田中店長は、「パソコンに関する悩みを解決しているから」とみている。例えば、今年4月のWindows XPのサポート終了のときは、パソコン初級者からの多くの問い合わせに対応。「パソコンを買い替えるときにお客様が求めていたのは、『今までと同じように操作できるかどうか』だった。他店の場合、サポート終了後のセキュリティの危険性を訴えて買い替えを促すケースが多かったのではないか」と、田中店長は分析する。実際に、「他店では、今後XPのパソコンは使えないといわれたが、実際はどうなのか」との問い合わせが殺到したという。「パソコンをどのように使っているかをくわしくお聞きして、インターネットにつなげる必要がないのであれば、『そのまま使用できます』と説明した。その際、サブマシンとしてWindows 7や8など、XP以外のOSを搭載したモデルを購入したほうがいいと提案した」(田中店長)そうだ。

こうしたお客様への対応によって、今年3~4月のパソコンの販売は、前年同期から飛躍的に伸びた。「ドスパラのオリジナルパソコンは、高性能モデルが5万円台からある。ほかのメーカーブランドより安いことも、購入につながった」という。予算に応じてカスタマイズできる点も、評価が高かったようだ。さらに、3万円台など、できるだけ低価格でパソコンを手に入れたいという要望には、中古品で対応。お客様が求める接客に加えて、豊富にパソコンを揃えていることでお客様を獲得している。

このほか、非パソコンユーザーの来店を促すために、昨年末から通販サイトの上海問屋が提供しているユニークな雑貨を販売。とくに、300円弱のiPhone用ケーブルが売れているという。また、注目アイテムをピックアップしたコーナーを設置したところ、「スマートフォンユーザーが頻繁に来店するようになった」と、田中店長は手応えを口にする。

5月以降は、市場の大きな動きと同様、「パソコンの販売は厳しい状況が続いている」と認めるが、「問い合わせにきちんと答えることができれば、お客様は必ずついてくる」と、田中店長は断言する。10年以上、このスタイルでパソコン初級者から上級者までを獲得してきたドスパラ八王子店に、ブレはない。

●店長が語る人気の理由――田中伸武 店長

埼玉・大宮、東京・新宿の店舗を経験し、一昨年11月にドスパラ八王子店の店長に就任した。八王子を、「大宮や新宿と比べると、パソコンのヘビーユーザーが少ない街」と表現する。パソコン専門店として、「パソコンのよさを伝えたい」。接客には定評があったドスパラ八王子店だったが、就任後は初級者に対する「わかりやすい説明」とは何かを徹底的に研究。これが、比較的年齢の高い層の来店につながっている。

スタッフは5人と、競合店に比べれば圧倒的に少ない。しかし、「パソコンの知識に関しては、他店には絶対に負けない」。ドスパラ八王子店の屋台骨を支えるのは、パソコンに精通する人材なのだ。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2014年8月11・18日付 vol.1542より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは