オーティコン補聴器は6月8日、東京・品川で「オーティコン補聴器 プレスカンファレンス」を開催し、補聴器市場の現状や、補聴器と日常生活の関わり方などを発表した。

木下聡プレジデントは、「今回は補聴器の業界のなかで、我々が感じているさまざまな変化を紹介する。製品に関するテクノロジだけでなく、補聴器そのものの位置づけや健康管理に補聴器がどのように関わっていくのか。補聴器は、聴こえに難のある高齢者がつけるものではなく、もっと深い可能性を秘めている」と語った。

デンマークのオーティコン本社から来日したオーレ・ヨーゲンセン新プレジデントは、「今後1年以内に、当社製品の3分の2以上は、スマートフォン経由でクラウドにつながる。そうすれば、補聴器の音量をコントロールしたり、補聴器から音声アシスタントに働きかけたりと、さまざまなことができるようになるだろう」と展望する。

難聴は認知症のリスクを高める、「当事者だけの問題ではない」

登壇したノッティンガム大学国立衛生研究所バイオメディカルリサーチセンターのメラニー・ファーガソン博士は、「日本では、総人口の11.3%にあたる約1400万人が難聴。このうち、補聴器を使用しているのは14%で、先進国最低の数値だ」と述べた。

一方で、「補聴器装用者の84%が生活の質が向上したと述べており、補聴器の有用性は示されている。ところが、制度が整備されておらず、医者や専門家が万全というわけではなく、難聴者にとっては補聴器の必要性が高くても、なかなか使用できない状態になっている」と分析した。

補聴器の普及でユーザー側のハードルになっているのは、価格や心理的な抵抗感だ。価格については、一部の国や地域では、難聴と認められれば補聴器の費用負担が大幅に軽くなる制度を設けている。日本にも同様の制度があるものの、周知や案内が徹底されていないことが課題にあがった。

心理的な壁については、家族や友人の協力が必要だという。ファーガソン博士は、「難聴は、聴こえない音を脳が補うことになるため、必要以上に疲労してしまうが、徐々に進行するため本人ですら気が付かない。そして、あまりに症状が進むと、脳の使い過ぎで疲労が蓄積し、認知症の発症を促してしまう危険がある」と警告する。

解決策としては、「認知症の医療費や生活への影響と、補聴器の費用を一概に比べることはできない。しかし、もし家族や友人が相手の聴こえ方に関して違和感があれば、まずは専門家に相談してほしい。難聴は、当事者だけの問題ではない」と訴えた。木下プレジデントは、「日本にも専門家がいる販売店は多数ある。店頭でも相談できるので、気軽に利用していただきたい」と話した。