宝塚歌劇花組『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』 撮影:三上富之 宝塚歌劇花組『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』 撮影:三上富之

宝塚歌劇花組男役トップスター、明日海(あすみ)りおのお披露目公演が、8月22日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。演目は宝塚歌劇の人気作のひとつ『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』だ。

宝塚歌劇花組『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』チケット情報

本作は、自由奔放な生き方を求めたオーストリア皇后エリザベートの生涯を、彼女を愛する黄泉の帝王トート(死)との愛憎を軸に描き出したミュージカル。ずっと耳に残るような名曲の数々であふれた作品だ。宝塚歌劇ではトートを主役に据え、歴代のトップスターが自身の持ち味を活かしながらトート像を作り上げてきた。今回トップスターに就任した明日海は、美しくクールな雰囲気と高い歌唱力の持ち主。登場シーンから美しく妖艶なオーラを放ち、観客を惹きつける。そして、稽古段階の取材で「表情や動きに緩急をつけて見せたい」と言っていたとおり、鋭い目つきや時折浮かべる不敵な笑み、ゆらりとした動きなどで、“死”が放つ冷たさを表現。その一方で、自分に気持ちが向かないエリザベートに燃え上がるような想いを表す一面もあり、クールながらも内に熱いものを秘めた明日海ならではのトートを作り上げている。

エリザベートを演じるのは、本公演で退団するトップ娘役、蘭乃はな。可憐でおてんばな少女時代から年老いていくまで、エリザベートが心身ともに変化していく様を丁寧に表現している。自由に生きたいと願っていた少女時代。フランツ・ヨーゼフに見初められて宮廷へ嫁いだエリザベートを待っていたのは、皇太后ゾフィーによる厳しい教育だった。フランツの支えも得られず、孤独に苦しみながらも強い決意を示すエリザベート。その精神的な脆さと強さを情感豊かに演じる蘭乃に、集大成らしい姿を見た。

また、エリザベート暗殺犯で狂言回し的存在のルイジ・ルキーニを演じるのは望海風斗(のぞみ・ふうと)。狂気に満ちた表情や口調、歌唱力の高さで魅せ、テンポ良く物語を運んでいく。フランツは専科・北翔海莉(ほくしょう・かいり)が演じ、大きく重厚な存在感でフレッシュな新生花組の空気を締める。皇太子ルドルフは役替わりで、この日演じたのは芹香斗亜(せりか・とあ)。儚さをまとった佇まいで、純粋で真っ直ぐなルドルフを表現している。

初日には上演回数800回を迎えた本作。明日海をはじめとするフレッシュな面々により、新たな『エリザベート』が生み出された。公演は9月22日(月)まで。その後、10月11日(土)から11月16日(日)まで東京宝塚劇場で上演。チケットぴあでは東京公演のインターネット先行抽選を8月31日(日)午前11時より受付。

取材・文:黒石悦子