皆さんは残酷で不条理な世界を描き続けた「エドワード・ゴーリー」(1925-2000)という、アメリカの絵本作家をご存知ですか?

独特の韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画で、ユニークな作品を数多く発表し続けた作家です。また劇場の舞台芸術なども手掛け、幅広いジャンルで活躍し、その高い芸術性が「大人のための絵本」として、世界各国で熱狂的なファンに支持されています。

ゴーリーと言えば、ヴィクトリア朝に広まった、教訓めいた物語のパターン……「善は報われ、悪は罰せられる」という世界観を、涼しい顔でひっくり返した人物です。

例えば、名前にA~Zまでの頭文字をもつ26人の幼い子たちが、ABC順に26とおりのかわいそうな死に方をしていく『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』(河出書房新社)や、孤児になった女の子が、つらい寄宿舎生活に耐えかねて脱走し、無頼漢にさらわれ、さらなる不幸に突き落とされ続けていく……という、全く救いがない、各ページに悪魔が描かれている『不幸な子供』(河出書房新社)といった作品などを描いています。

 

ゴーリーの世界では、子どもは善であれ悪であれ、理不尽に死ぬほかはないようです……。

しかし描かれていたのは、残酷なものばかりでもありません。

例えば、A~Zまで、26の不思議な生き物たちが集ったゴーリー版「幻獣辞典」である『まったき動物園』(河出書房新社)という絵本では、地球上の動物園では絶対に見ることができない、可愛い!キレイ!優しい!を一切排除した、おぞましい姿の、性格の悪そうな幻獣を次々に見ることができます。

 

動物たちの姿は思いきりシニカルで、笑いがこみあげてきてしまいます。ユーモラスな短歌形式の和訳で、一つ一つの幻獣が紹介されているのも、見所の一つです!