ロングセラーとなったiPhone 5sとiPhone 5c

2008年7月にソフトバンクモバイルが国内で初めてiPhoneを発売してから、今年で6年。国内初代モデル「iPhone 3G」から最新機種「iPhone 5s/5c」まで、いずれもヒットした。2年ぶりのフルモデルチェンジになるとみられる次期モデルに対する期待も高まっている。新モデルの発表を前に、販売中の「iPhone 5s」と「iPhone 5c」のこれまでの売れ行きを振り返った。

●「iPhone 5s」は大ヒット、「iPhone 5c」もロングセラーに

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、高性能のカメラや指紋認証機能「Touch ID」を搭載した上位機種「iPhone 5s」は、2013年9月の発売以来、1年近く販売ランキングのトップを独走するロングセラーになり、ケタ違いの販売台数を叩き出している。

廉価版の位置づけの「iPhone 5c」もコンスタントに売れ続け、同じくロングセラーの一台になった。「iPhone 5s」と「iPhone 5c」の販売台数の比率はおよそ4対1。「iPhone 5c」は「iPhone 5s」に比べ人気がなく、あまり売れていないような印象があるが、これまでの累計販売台数は、昨年秋発売のAndroid搭載スマートフォン「Xperia Z1 f SO-02F」や「Xperia Z1 SOL23」より多く、スマートフォンとしてはヒットしたといっていい。

「iPhone 5s」と「iPhone 5c」の2機種を合算すると、2014年8月31日までの累計販売台数は、2011年10月発売の「iPhone 4S」のおよそ1.7倍。モデルチェンジ後に値下げされた旧機種を買い求める人もいるので、最終的には「iPhone 4S」の2倍程度の水準まで伸びそうだ。

●初めて3キャリアが激突! シェア争いは「老舗」のソフトバンクが勝利

iPhoneは、「iPhone 4S」からソフトバンクモバイルの独占販売ではなくなった。「iPhone 5s/5c」は、初めてドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの主要3キャリアが取り扱うことになり、キャリア間の競争が激化。各社とも、ネットワークや料金面などで自社が一番すぐれているとアピールした。

「BCNランキング」によると、2014年8月31日までの「iPhone 5s/5c」に限ったキャリア別販売台数シェアは、ソフトバンクモバイル38.7%、au33.8%、ドコモ27.5%。「iPhone 5s/5c」から取扱いを始めたドコモのシェアは3割に届かず、長年取り扱ってきた「老舗」のソフトバンクが全体の4割弱を占め、トップを制した。

発売1週目(発売3日間)、2週目(発売10日間)、発売から1か月間の時点では、ソフトバンクのシェアは4割を超えていたが、他のキャリアの追い上げを受け、若干下がった。それでも、契約者数の多いドコモ、auを抑えてトップに立ち、優勢であることには変わりはない。iPhoneを巡るシェア争いは、「iPhone 4S」の2011年秋~2012年夏、「iPhone 5」の2012年秋~2013年夏に続き、「iPhone 5s/5c」の2013年秋~2014年夏も、ソフトバンクの勝利に終わりそうだ。

●ソフトバンクの強みはネットワークと長年の実績・イメージ

ソフトバンクは、「つながりやすさNo.1」「通信速度No.1」と宣伝している。アプリを活用した膨大な通信データを分析した結果では、通信速度もつながりやすさもNo.1という。また、総務省の報道資料によると、2012年度以降、重大事故を起こしていないのは3キャリアのうちソフトバンクだけであり、安定したネットワークを提供しているといえるだろう。ネットワーク関連以外の強みは、これまで培ってきた「iPhoneならソフトバンク」というイメージと、「学割」をはじめとする各種キャンペーンのおトク感。iPhoneからiPhoneに買い替える割合が高いとみられるiPhoneの場合、シェア=支持率とみなしてもいいだろう。そう考えると、既存ユーザーにとって、ソフトバンクのネットワークやサービス・サポート体制は、わざわざキャリアを乗り換える必要のない満足できるクオリティのようだ。

参考:「つながりやすさNo.1」「通信速度No.1」ソフトバンクホームページ

http://www.softbank.jp/mobile/special/network/connect/

●「期待」と「評価」が鍵を握る 今年は新料金プランも焦点に

次期モデルも取扱いキャリアは3社のまま変わらず、競争がヒートアップしそうだ。「iPhone 5s/5c」からアップル直営のApple Store限定で販売されているSIMロックフリーモデルを含めると、選択肢は四つ。ただし、SIMフリーモデルは、前回と同じなら、キャリア版より本体価格は割高で、発売時期も遅いだろう。

今年6月から8月にかけて各社が導入した新料金プランでは、基本使用料に相当する音声通話プランの料金だけで、国内なら時間や回数の制限なく、「通話し放題」になる。データ通信プランは、従来より区分が細かくなった複数のプランから、利用状況に合わせて最適なプランを選択する。従来との違いは、余ったデータ容量を家族間で「シェア」できるようになったこと。ドコモとソフトバンクは、主回線で契約したデータ容量を、同一家族グループの副回線で分け合うことができる。auは、これに準じたサービスとして、余ったデータ容量を家族にプレゼントできる「データギフト」を今年12月に開始する。さらにソフトバンクは、家族向けに、回線ごとに利用料金から最大2年間毎月300~3000円を割り引く「家族おトク割」を用意。家族全員で同じキャリアに揃えるメリットの一つとして、他社にはない「家族おトク割」による料金の割引を挙げている。

今秋以降のiPhoneを巡るシェア争いは、毎年、必ず買い替える熱心なファンに加え、購入から2年を機に買替えを検討する「iPhone 5」ユーザーの動向が焦点になるだろう。毎月支払う通信料金の幅は広がったが、若干わかりにくくなった各社の新料金プランに対する評価も、少なからず売れ行きに影響を与えるはずだ。ソフトバンクは、これまで同様、シェアトップの座を確保するのか。あるいは、後発のau、ドコモが追い上げるのか。ひとまず新モデルの正式発表が楽しみだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

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