ジャリル・レスペール監督

ファッションに疎い人でも、本作のタイトルであるデザイナーかつ、ブランド名を聞いたことがない人はいないだろう。伝説的デザイナーの人生を見つめた『イヴ・サンローラン』。ジャリル・レスペール監督は、「夢を求め実現するが、そこに代償を伴うクリエイターの話を探していた。加えて愛の物語を描きたかった」との志のもと、サンローランへと行き着いた。

『イヴ・サンローラン』監督インタビューその他の写真

そしてサンローランを「創造することにしがみついているような部分がある」と分析。次のように続けた。「死から逃れるためにクリエイションしているような人であり、それが彼をヒロイックにしている。私が特に惹かれたのは、こうしたアンビバレントな面だ」。

本作は本国フランスで初登場NO.1を記録。人々の目を引いたのは、本人と見まごうほどにサンローランを体現してみせた若手演技派ピエール・ニネの存在だった。

「天才を演じるには、天才が必要だった。(初期のミューズ)ヴィクトワールと決定的に決別するシーンのピエールは特に素晴らしい。さまざまな感情が混在している場面であり、映画のフォーマット的にも、ここを分岐点にして雰囲気がガラリと変わる重要なシーンだ。ピエールは凄いパフォーマンスをしてくれた」と称えた。

サンローランを支え続けたピエール・ベルジェには日本でも知られるギョーム・ガリエンヌが扮した。監督は「この映画におけるベルジェは天才の人生を目撃するパートを担っている」として、ギョームに「余計な演技はするな」と要求。抑制した演技が、観客を物語へと強く引き込む。

同然、ファッションも見どころ。モンドリアンルック、スモーキングといった象徴的なスタイルも登場。財団初公認作品として、財団保有の貴重なオリジナル衣装の貸し出しが実現した。「ドレス選定の際は、ある意味、ドライに選んでいった。凄さを実感したのは、撮影の時だった。モデル役の女性たちが実際に衣装を身に着け、照明があたり、動きだした瞬間、本当に凄いものを撮らせてもらっているんだと感動を覚えたよ」。

『イヴ・サンローラン』
9月6日(土)角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他全国ロードショー

取材・文・写真:望月ふみ