ダンス、テクノロジーアート、音楽など、ジャンルを越えて活躍するアーティスト梅田宏明が、Hiroaki Umeda+Somatic Field Project『1-resonance』公演を行い、2009年初演の『1.centrifugal』と、タイトル未定の新作、そして自身の2015年初演のソロ『Intensional Particle』の3作を上演する。
「約3年前、僕が開発したメソッドを日本の若いダンサー達と共有するために『Somatic Field Project』というプロジェクトを始めたんです。1度それを公演という形で、日本でお見せしたいと考えました」と梅田は語る。
『1.centrifugal』は、フィンランド人と日本人ダンサー達によって日本で初演されたもの。梅田にとって初めて自身以外に振り付けた作品で、踵と骨盤と胸の3点を軸にバランスを取る彼独自のメソッドを活用し、遠心力を意味するタイトル通り、回るような動きで構成している。「僕のメソッドはダンスのテクニックではなく、いかに無駄なく動けるかという、身体の使い方。まずは力を抜くことから始め、次に踵での床の立ち方、そして骨盤、胸……と力のかけ方を訓練していくんです。2009年以降、色々な国や身体の人に使い、非常に有効だと感じてきました。『1.centrifugal』はこのメソッドの“基本編”です。これに対して新作は、跳ねるような動きなど色々な質感を加えながら、音楽を奏でるように動く“発展編”。ダンサーには、自分を人間だと思わないでほしいと言っています。社会生活で培った人間的な動きを排除し、マテリアルとして動いてもらいたい。個性を押し出すのではなく、抑えたところからにじみ出るものを拾いたいからです」
上記2作には出演しない梅田を観ることができるのは、ソロ『Intensional Particle』だ。目がくらむような音と映像の洪水の中、切れ味鋭い驚異的な梅田の動きが展開する。「将来的に僕は、身体を越えたところで振付を扱えないかと考えているのですが、そのプロセスとして、踊りと映像を極めて近い存在として振り付けていこうというコンセプトで創りました。映像には自然な力の流れみたいなものを表したかったので、よく物理などで使われる、力を表現する数式を使ってグラフィックを描いたり、センサーを使って僕の筋肉の動きをデータにし、映像に反映させたりもしています」
海外では、ダンスだけでなく音楽など様々なフェスティバルで引っ張りだこの梅田。「僕にとって日本は、実験し、自分のアートを育む場所。最近、振付家のワークショップなども始めました。一方、海外には、マーケットも価値基準も広く色々なものが受け入れられやすいという長所がある。僕はダンスというよりトータルで観客の感覚に訴え、それがどのような体験になるかを重視しているので、日本の観客にも自由に感じに来てほしいです」
本公演は、6月30日(土)・7月1日(日)に東京・あうるすぽっとにて。
取材・文:高橋彩子