コンナムルクッパ(豆モヤシの汁かけごはん)

『ヒョンデオク』のコンナムルクッパ。スランと呼ばれる軽く火を通した生卵が添えられることが多い

『孤独なグルメ』の冒頭にも映っていた全州の南部市場でもよく見かける豆モヤシは全羅北道の名物で、アルコールを分解するアミノ酸の一種であるアスパラギン酸を多く含むため、二日酔いの妙薬として知られている。

全州市内には、朝から行列ができるコンナムルクッパの専門店がいくつもある。

『ヒョンデオク』『ウェンイチプ』『サムベクチプ』などが人気店だ。『ヒョンデオク』はかつて全州の南部市場で毒舌ハルモニが切り盛りするカウンターだけの小さな店に過ぎなかったが、今では代替わりして全国でチェーン展開され、ソウルでも食べることができる。

豆モヤシのスープなんてあっさりし過ぎて物足りないんじゃ? と思われるかもしれないが、イリコや牛肉でダシをとっているので、しっかりした旨味がある。

あっさりしたスープとシャキシャキの豆モヤシは、少し固めに炊いたごはんと相性抜群だ。

名もない大衆食堂の定食

南部市場の近くでたまたま入った大衆食堂の定食。これで5000ウォン。キムチやナムルはおかわりできる

お昼どき、市場やバスターミナルなど人が集まるところで、小さな食堂を見つけ、そこが賑わっていたら迷わず入ってみよう。

写真は南部市場の近くでたまたま入った定食屋さん。白飯と大根のスープにおかずが7皿付いて5000ウォンだった。肉料理こそないものの、イワシの煮物と味付け卵が2つも付いている。野菜や海苔もたっぷり。

全羅道の食の豊かさ、そして、日本で公開中の映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』でも描かれていた食のホスピタリティが強く感じられるのは、こんな場所かもしれない。

16 南部市場の近くでたまたま入った大衆食堂の定食。これで5000ウォン。キムチやナムルはおかわりできる

※7月22日(日)大阪で、筆者のトークイベントが行われる予定です。詳細が決まりしだい、本コラムやTwitterでお知らせします。

鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。