『The Imitation Game(原題)』

ベネディクト・カンバーバッチ主演の『The Imitation Game(原題)』が、トロント映画祭で絶賛を集めている。ひと足先に上映されたテルライド映画祭でも評判だったが、ここにきてオスカー候補入りへの勢いを、ますます強めた印象だ。

実話にもとづくこの映画でカンバーバッチが演じるのは、数学の天才アラン・チューリング。第二次大戦中、チューリングは、ナチスの暗号機エニグマを解読するという重大な使命を受け、見事に達成してみせる。だが、同性愛者だったことを隠し続けてきた彼には、後に不合理で悲劇的な運命が待ち受けているのだった。

子供の頃も学校でいじめられ、社交的なスキルを身につけることのなかったチューリングについて、カンバーバッチは、「彼は辛い人生を送った。でも、被害者意識をもったことは一度もなかったんだ。そこがすばらしいと思うし、だからこそ、僕は、彼こそ真のヒーローなんだと思う」とコメント。ジョーン(キーラ・ナイトレイ)と心を通わせ、プロポーズしたにも関わらず、ゲイであることを打ち明けて結婚しなかったことについては、「彼は彼女を愛していた。でも、それは高校時代に本当に愛したクリストファーに対するような強い感情ではなかったんだよ」と分析した。チューリングは、エニグマを解読するために発明した機械(コンピュータの走り)を、クリストファーと名付けている。

カンバーバッチは、昨年のトロント映画祭にも、オープニング作品で主演作の『フィフス・エステート 世界から狙われた男』のほか、『それでも夜は明ける』『8月の家族たち』が上映されて訪れている。キャリアが絶好調なことを聞かれると、「今の状態は楽しませてもらっているけれども、そんな中で、私生活や友人関係、家族との時間を保つように心がけているよ」と語った。

文:猿渡由紀