有機ELテレビの堅調な売れ行きが続いている。LGエレクトロニクスと東芝に加え、ソニーとパナソニックが2017年6月に発売したことで、国内市場が本格的に立ち上がったためだ。すでに各社とも18年の夏商戦に合わせて新製品を発売。さらには船井電機も参入を予定しており、今年は市場がより活況となることが予想される。そこで今回は、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」から、有機ELテレビの1年間を振り返るとともに、今後の動向についても考察した。

まずは4社の製品が出揃って以降の動向を見るため、17年6月の販売台数を「1.00」とした指数推移を算出した(図1上)。1年間安定して指数は「1.00」を上回り、12月や3月の商戦期には「3.70」を超える指数となったものの、それ以外は「2.00」台で推移。市場が大きく拡大したとはいえない状況で、薄型テレビ全体に占める有機ELテレビの販売台数構成比は2%台にとどまっている。

一方で、動きが大きかったポイントとしては、平均単価があげられる(図1下)。1年前の平均単価は44.6万円で、非常に高価格であったが、毎月右肩下がりに下落している。直近の18年5月は30.2万円となり、1年間で14万円超も安くなっているのだ。現在販売されている画面サイズは55型、65型、77型の3パターンだが、単価の下落は比較的価格が安い55型に需要が集中したからではない。いまだ薄型テレビのなかで有機ELテレビはハイエンドな価格帯となるが、この単価の下落が市場に大きなインパクトを与えている。

では、各メーカーの販売動向も見ていこう(図2)。ソニー、パナソニック、LGエレクトロニクスの上位3社のシェア争いが激しさを増している。LGエレクトロニクスは従来から有機ELテレビを発売し、価格も他社に比べてほぼ半額だったことから、一時はトップシェアとなったが、年末からはパナソニックの販促強化と価格下落が影響してか、比率を落とした。そのなかで、唯一3割以上の安定したシェアを保っていたのが、市場の立ち上がり時期や高価格帯の製品に強いソニー。17年6月から18年5月までの累計シェアが40%弱でトップとなった。

現在各社から発表されている18年の新製品のなかで、店頭に並んでいないのは7月発売の東芝のみ。新たなサイズ帯の製品や、際立った新機能を備えた製品はないが、単純にラインアップが拡充されたことで、消費者の選択肢は広がったといえる。

また、テレビ市場全体としても、ここ数年はいくつかのターニングポイントを迎える。今年12月1日からは、衛星放送を使って4K・8K実用放送がスタート。来年10月からは消費税率の10%引き上げが予定されているため、それを迎えるにあたり、特需が発生する可能性がある。さらに20年には東京五輪を控えている。どれもテレビ市場に大きな影響を与える要素であり、どのタイミングで、どのような商品が求められるか、有機ELテレビの本格的な市場拡大はいつになるのか、注視する必要がありそうだ。(BCNアナリスト 山口渉)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

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