あの感動が帰ってくる!レナード・バーンスタイン生誕百年の今年、最後の愛弟子・佐渡裕渾身のオーケストラ・サウンドによって鮮烈に蘇る最高傑作。8月、佐渡が指揮する『ウエスト・サイド物語』シネマティック・ フルオーケストラ・コンサートが東京と大阪で6年ぶりに上演される。

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デジタル音声処理により、音楽部分だけを消した映画全編に、オケの生演奏をシンクロさせるコンサート。「映像や歌にぴったり合わせるのはものすごく大変。職人技の連発です。でもね、ただ合わせるだけではなく、『ここは勢いで行って多少ズレてもいい部分』とか、オケとそういう瞬時のやりとりもあって、映画とライブ感がちゃんと共存するのが面白い」

『ウエスト・サイド』の音楽の魅力を、「あんなに印象に残るナンバーばかりなのに、それが実は非常に理屈で書かれていること」という。たとえば、「ソ-ド-ファ#」という音程関係が、全編を巧みに貫く。それが「どこか不良っぽくて人を惹きつける」と同時に、その不協和な音程が、トニーの死によって抗争が収まったかに見えるラスト・シーンでは、そんな安直な平和の到来に疑問を投げかけるかのように鳴り響く。

「でも、そんな理屈を知らなくても虜にさせるのがすごい。バーンスタインの音楽にはさまざまなジャンルの音楽が共存している。ジャズの自由さ、クラシックの重厚さ、ラテン音楽のノリ。それをオケをフル活用して聴かせてくれる。欲張りバーンスタインのなせるわざですね」。『ウエスト・サイド』は、まさにそんな魅力が凝縮した、バーンスタインの最高傑作だ。

1990年の夏、来日中に体調を崩して帰国するバーンスタインを佐渡は空港に見送った。「ついにユタカにビッグ・グッバイを言わなければならない時が来た」と言う師に、なぜかどうしても別れを言えなかったという。その3か月後、バーンスタインは急逝する……。

6年前の前回公演。「音楽=レナード・バーンスタイン」というエンドロールに、客席から静かな拍手が自然に湧き起こったのは、小さな奇跡のようで感動的だった。会場のライヴ・スクリーンに大写しされた佐渡も感極まっているように見えた。「そりゃ、映像に合わせるの、めちゃくちゃ大変でしたから」と笑うが、けっしてそれだけではなかったはずだ。

1987年にタングルウッド音楽祭でバーンスタインに師事。翌年から3年間、アシスタントを務めた。「あの頃の僕の興味は指揮者としてのバーンスタインだったし、彼の作品について直接教わったのは実はほんの少し。今にして思えばつまらない自分でした。でもだからこそ今、バーンスタインのいろいろな作品を紹介したいし、初めて聴く人にも興味を持ってもらえる道筋を作らなきゃいけない。それが、最後にそばにいたことへの恩返しであり、使命だと思っています」

バーンスタインの魂を、佐渡裕というひとりの音楽家を通して共有する。それを味わえるのが、佐渡が振る東京と大阪のこのコンサートだ。クラシック界最後のカリスマの生誕百年を、佐渡とともに噛み締めたい。

取材・文:宮本明

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