中井貴一と若松節朗監督

『柘榴坂の仇討』に主演する俳優の中井貴一が15日に東京・世田谷の豪徳寺に眠る井伊直弼の墓前で映画の完成を報告した。中井は目の前で主君・井伊直弼を暗殺され、13年間仇討のためだけに生きた彦根藩士・志村金吾を演じており、「映画の中で、金吾は主君の墓参りも許されずにいた。今日、こうしてお参りができて、本当に映画が完結した」と感慨深げだった。

その他の写真

江戸城桜田門外で討たれた井伊直弼の仇討ちの命を受け、敵を探す旅に出る金吾が、13年間追い続けた刺客のひとり、佐橋十兵衛と再会するが、その日はくしくも政府が仇討禁止令を布告していた。

中井は「悪の印象を持たれがちだが、彼のやったことに間違いはなかったし、立派な理もあった。先見の明がある分、当時は異端児扱いされたが、亡くなってその偉大さがわかる人物」と井伊直弼への思いをコメント。また、本作は「時代劇を守らないといけないという、今の日本映画界全体のメッセージ」だと熱弁し、「ひとりでも多くの皆さんに届けられれば」と決意を新たにしていた。

十兵衛を演じる阿部寛については、「真面目さ、頑なさ、ストイックさが魅力」と振り返り、「ほぼ同世代として、スクリーンのなかに一緒にいられるのは本当にありがたい。楽しいセッションができた」と時代劇での初共演に喜びをかみしめた。イベントには若松節朗監督が同席し、「中井さんと阿部さんだからこそ、この時代ならではの愚直さを演じてもらえた」と話した。

『柘榴坂の仇討』
9月20日(土)全国ロードショー

取材・文・写真:内田 涼